WTI原油価格は、週間で小幅に上昇したものの、上値が重い。原油価格にとって重要なOPECプラス会合が近付く。イラクは減産停止を示唆するなど、足並みに乱れが。重要イベントが近付く中、原油価格の今後の見通しとは。
【原油価格のターゲット】
上値:80ドル
下値:77.61ドル
原油、小幅上昇
WTI原油価格は、週間で2週ぶりに上昇した。ただし、上昇率は0.2%と小幅なものにとどまった。
FRB(米国連邦準備制度理事会)による利下げ観測が高まったことや、米国の原油在庫が減少したことなどが、価格の上昇圧力となった。一方、イスラエルとハマスの停戦への期待が高まったことから、原油供給が安定するとの思惑が原油価格の上値を抑えた。
また、WTI原油価格が80ドル近くまで上昇する中、利益確定の動きも原油価格の下落圧力となった。
5月に入り、値動きが小さくなっている原油価格であるが、原油価格の動向に大きな影響を持つOPECプラス会合の開催が近付いている。
資料:BloombergよりDailyFXが作成。
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OPECプラス会合せまる
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成される「OPECプラス」が6月1日に会合を開催予定である。会合では、6月末まで実施が決定している原油の減産措置が延長されるのか、議論される見通しである。
OPECプラスによる減産が、原油価格をサポートしており、減産縮小が決定された場合、原油価格の下押し圧力となる可能性があり注目である。
イラクの石油大臣は、さらなる減産に同意しない考えを11日に示した。その後発言が修正され、減産延長に関するOPECの決定を遵守する旨を述べたものの、減産を主導しているサウジアラビアと異なるスタンスであることを示唆しており、OPEC内でも足並みが乱れている。
OPECの原油生産量は、減産により生産能力を大幅に下回る水準である。原油価格が一時と比べ上昇している中、原油の増産・輸出増により収入を増やしたいとの思惑を持っている国が増えていることなどが、OPEC内でも原油減産に対して足並みが乱れている背景である。
イラクの石油大臣は発言を修正したものの、6月のOPECプラス会合に向け、減産を巡る思惑が原油価格を左右する可能性があり注目である。
資料:BloombergよりDailyFXが作成。
WTI原油価格の見通し
WTI原油価格(1バレル)は、200日移動平均線近辺、かつ80ドルがレジスタンスとなり、反落した。原油価格の上値が重いものの、フィボナッチリトレースメント61.8%水準77.61ドルで引き続きサポートされた場合、下値は限定的との見方を投資家に印象付ける可能性がある。
テクニカル面でやや弱気シグナルが点灯しているものの、OPECプラス会合を巡る思惑は、原油価格にとって上下双方に左右する可能性があり、原油価格が上下双方に動く展開を想定したい。
原油価格が上昇した局面では、心理的節目である80ドルを上方ブレイクできるかに注目。上方ブレイクに成功した場合、原油価格の上昇圧力が一段と高まる展開を見込む。
一方、原油価格が下落した局面では、フィボナッチ61.8%水準77.61ドルで引き続きサポートされるかに注目。サポートされなかった場合、原油価格の下落圧力が一段と高まる可能性がある。
【原油価格のターゲット】
上値:80ドル
下値:77.61ドル
WTI原油価格日足チャート
資料:TradingView
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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著
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