※2024年4月15日15時54分更新
ユーロは先週、主にドルに対して大きく後退した。欧州中央銀行(ECB)のハト派的なガイダンスがユーロ安の素地を作ったが、中東における地政学的リスクの高まりも重しとなった。
ユーロは先週、主に対ドルで大きく下落したが、対英ポンドでも若干の失速を見せた。ECBが11日の理事会でハト派的な姿勢を示したことがユーロ下落の下地となり、週末にかけて中東の地政学的緊張が高まったことでさらに悪化した。
ECBはハト派に転じる
ECBは11日に金利を据え置いた。利下げこそなかったが、ECBはインフレが低下するとの見方を強めており、間もなく金融緩和に転換する意向であることに疑いの余地はなかった。このガイダンスを受け、トレーダーの間ではクリスティーヌ・ラガルド率いるECBが次回6月の政策決定会合で利下げを開始するとの見方が増えている。
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差が出る金融政策:ECB vs FRB
欧州中銀が米連邦準備制度理事会(FRB)に先行して金融緩和を実施するという見通しは、ユーロ/ドルにとって短期的に不利になる可能性がある。ほんの数週間前には、FRBは米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で6月にも金融緩和に踏み切る可能性が示唆されていた。しかし予想を上回る米消費者物価指数(CPI)や労働市場のデータが相次ぎ、このシナリオは本命から外れた。利下げ観測が遠のく過程でドルは上昇した。
差が出る金融政策は、対英ポンドでもユーロのマイナス材料となる可能性がある。イングランド銀行(BOE、中央銀行)も2024年に引き締め政策を解除すると見られているが、市場は8月まで最初の利下げはないと予想している。さらに、トレーダーはBOEの今年の利下げ幅は50ベーシスポイント(bp)としか見ていないのに対し、ECBは75bpの緩和を実施すると予測している。
地政学的緊張の高まり
中東情勢の緊迫化は、これまで安全資産とされてきたドルに対する悪影響の方がより顕著なはずだが、短期的にユーロを不安定にさせるだろう。イスラエルによるシリア大使館への攻撃を受けたイランが報復に動くとの懸念は、この地域での緊張を高め、市場では不安が広がっており、高ベータ通貨を圧迫する可能性がある。
ユーロ/ドル見通し - テクニカル分析
ユーロ/ドルはここ数日で急落し、その過程で複数のテクニカル水準を割り込んでいる。直近の下げで、価格は昨年11月初旬以来の安値に到達し、1.0635の重要なサポートに接近している。これ以上の下落を防ぐためにユーロの強気派は、このゾーンを断固として守る必要がある。
一方、売り圧力が和らぎ、相場が現在の水準から反発に転じた場合、まずは1.0695と1.0725にそれぞれレジスタンスが出現する。この2つの閾値を超えると、1.0825近辺の50日および200日単純移動平均線に注目が移る。さらに強含めば、2023年の低迷を基点に引かれたフィボナッチ・リトレースメント50%の水準1.0865を突破できるかが焦点となる。
ユーロ/ドル 日足チャート
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変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 6% | -5% | 1% |
週次 | -19% | 23% | -8% |
ユーロ/英ポンド見通し - テクニカル分析
ユーロ/英ポンドは先週、緩やかに下落したが、0.8525でサポートを見つけ、週間安値からは上昇に転じたため、週末に向けて下落の勢いは弱まった。今後数日間、戻り歩調が続けば、50日単純移動平均線付近の0.8550がレジスタンスとなろう。さらに上値追いの展開となれば、0.8575にあるトレンドライン(レジスタンス)、そして0.8600が注目される。
あるいは、弱気勢が巻き返しを図り、ユーロ/英ポンドが下降を再開した場合、3月下旬のスイングローである0.8525がサポートとなりそうだ。強気筋は、このテクニカルエリアを上回る水準を維持しなければならない。維持されなければ、売り手がこの機会を捉えて、2023年の安値圏付近で売りを仕掛ける可能性がある。
ユーロ/英ポンド 日足チャート
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--- DailyFX.com マーケットストラテジスト ディエゴ・コルマン著
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