この記事では、スプレッドの拡大から身を守るために重要な、FXの取引のテクニックとコツについてご紹介します。
スプレッド(spread)とは、英語で「広げる」または「延ばす」という意味のある言葉です。FX(為替)のスプレッドとは、ビッド(Bid、Buy、買い)とアスク(Ask、Sell、売り)の価格の差を指します。
スプレッドはビッドの価格からアスクの価格を引くだけで簡単に計算できますが、基本的には注文画面に表示されるため、計算は不要です。
そして、スプレッドは様々な理由で変動しますが、この点については後述したいと思います。
FXではスプレッドの変動に注意すべき
トレーダーは、FXの実質的なコストとなるスプレッドの幅を常に意識しておく必要があります。なぜなら、スプレッドが広がるということは、取引コストが増加するということだからです。
例えば、米ドル/円(USD/JPY)を1万通貨取引する場合、スプレッドが1銭(1pips)であれば取引コストは100円となります。もしスプレッドが2銭になれば、取引コストは200円に増加することになるのです。
初心者トレーダーは、特にスプレッドに注意が必要です。スプレッドが広がっていると取引コストが増加するだけでなく、マージンコールを受けたり、ロスカットされたりする危険性が高まります。
これから、FXを成功させるための基本的なポイントとして、3つの取引のテクニックと戦略を紹介します。スプレッド、通貨ペアの流動性、時間帯に影響を与える要因に着目しましょう。
マージンコールとは 証拠金維持率が特定のラインを下回ったときに発生する通知のこと。ロスカットがおこなわれる水準に近付いていることを知らせるため、「ロスカットアラーム」とも呼ばれる。 |
ロスカットとは 一定の水準以上の損失が発生した場合に、保有ポジションを強制的に決済する仕組み。損失拡大を防ぐことを目的としておこなわれる。 |
スプレッドの変動に影響を与える3つの要因
スプレッドの拡大にともなう取引コストの増加を回避するために、トレーダーは以下の要素に着目する必要があります。
- ボラティリティ:経済指標の発表や、大きなニュースによってもたらされるマーケットのボラティリティは、スプレッドの拡大を引き起こす可能性があります。
- 流動性:マーケットに流動性が不足している場合にも、スプレッドが拡大することがあります。流動性とボラティリティは相互に関連していて、新興国の通貨など、流動性の低い通貨ペアは、スプレッドが高いことで知られています。また、マーケットの流動性が低いことは、ボラティリティの原因にもなります。
- スプレッドとニュース:NFP(米国非農業部門雇用者数)雇用統計発表のような注目を集めるイベントの前には、リスクを相殺するためにリクイディティプロバイダーはスプレッドを広げることがあります。
通常、スプレッドは拡大した数分後に平均値に戻るので、忍耐強く待ち、取引はスプレッドが狭くなった時に限定しておこなうのがよいでしょう。
流動性が高く、スプレッドが狭い通貨ペアを選ぼう
多くのトレーダー(特に初心者)が、FXの取引で流動性の高い通貨ペアを選んでいます。通常であれば、流動性の高い通貨ペアはスプレッドが狭くなるからです。
主要通貨ペアであるユーロ/米ドル(EUR/USD)、米ドル/日本円(USD/JPY)、英ポンド/米ドル(GBP/USD)、米ドル/スイスフラン(USD/CHF)は、取引量が多いため、すべての通貨ペアの中でスプレッドが最も狭くなります。
ただ、これらの通貨も常に低スプレッドというわけではありません。ボラティリティや流動性、ニュースの影響を受けるため、スプレッドが拡大する可能性もあります。
米ドル/メキシコペソ(USD/MXN)、米ドル/南アフリカランド(USD/ZAR)、米ドル/ロシアルーブル(USD/RUB)などの新興国通貨は、一般的に主要通貨ペアに比べてスプレッドが広かったり、ボラティリティが高かったりします。そのため、これらの通貨を取引する際には、レバレッジを低くするか、あるいは全くレバレッジをかけないのがよいでしょう。
下の図では、黒枠の部分がその通貨ペアのスプレッドを示しています。主要通貨ペアである米ドル/円とユーロ/米ドルのスプレッドは狭く、それぞれ0.7pips、0.6pipsとなっています。
一方、新興国通貨である米ドル/南アフリカランドや米ドル/ロシアルーブルのスプレッドは、それぞれ90pips、1000pipsと極めて広くなっています。
時間帯のスプレッドの変動への影響と理由
取引時間帯も、FXのスプレッドの変動に影響を与えます。そのため、時間帯を戦略に織り込むことが有効です。主要市場の取引時間(東京、ロンドン、ニューヨーク)では取引量が多いため、通常、FXのスプレッドは最も狭くなります。
この時間帯では、狭いスプレッドで取引することができます。ロンドン市場とニューヨーク市場の取引時間帯が重なる時間帯では、スプレッドはさらに狭くなります。
以下に示す時間は、米国東部時間(日本時間併記)です。米国東部時間の午前8時から午後11時(日本時間の午後9時から翌午前0時)までは、ロンドン市場とニューヨーク市場の取引時間が重なっています。
他にも、FXに最適な時間帯になる要因があります。
FXのスプレッドの変動を考慮した米ドル/円(USD/JPY)の取引例
上記のスプレッドを考慮した取引テクニックをすべて組み合わせれば、広いスプレッドで取引をしてしまうリスクを減らすことができます。ポジションをオープンした時とクローズしたい時ではスプレッドが変わる可能性があるため、取引を開始する時と決済したい時の両方で、これらの方法を覚えておくことが大切になります。
主要な通貨ペアの1つである、米ドル/円を使った簡単な例を見てみましょう。流動性が高く、他の通貨ペアに比べてスプレッドは非常に狭くなっています。
開きすぎ注意?スプレッドに影響を与える要因に注意する
米ドル/円を取引する場合には、スプレッドに影響を与えるような大きな出来事や指標の発表がないことを確認する必要があります。最新ニュースを常に把握し、経済指標カレンダーを活用すると良いでしょう。
経済カレンダーの一部をここでご紹介します。「影響が大きい」イベントは、スプレッドが拡大する可能性が高いため、ニュースイベントにもとづいた取引をするのでなければ、避けて取引するのが賢明です。
ボラティリティやスプレッドが拡大する可能性のあるイベントとしては、以下のようなものがあります。
取引の時間帯を考える
ボラティリティが高い米ドル/円では、どの時間帯で取引するかについても考える必要があります。一般的にFXで最も流動性の高い時間帯は、ロンドン市場とニューヨーク市場の取引時間帯が重なる、米国東部時間の午前8時から午前11時(日本時間の午後9時から翌午前0時)の間です。米ドル/円は、東京市場の時間帯でも流動性が高くなります。
新興国通貨は、主要市場の取引時間帯以外で取引すると、スプレッドが非常に広くなります。そのため、新興国通貨を取引する際には、最も流動性の高い主要市場の時間帯に取引するようにしましょう。
FXのスプレッドの変動に関するFAQ
この項目では、FXのスプレッドの変動に関する知っておきたいことや注意しておきたいことをまとめてご紹介していきます。
- FXのスプレッドが急に広がる(上がる)時間は?
- FXのスプレッドは、なぜ早朝に広がるのですか?
- スプレッドが広がる理由はどのようなものがありますか?
- FXでスプレッドが狭いことのメリットは?
- FXの取引では手数料がかかりますか?
- 「スプレッド拡大」とはどういう意味ですか?
- スプレッドの「原則固定」とは何ですか?
- 流動性が低くなる日はありますか?
- FXのスプレッドはいつ支払っているのですか?
1. FXのスプレッドが急に広がる(上がる)時間は?
FXのスプレッドが急に広がるタイミングは、重要な経済指標の発表前後が多いです。なぜなら、急激な価格変動が引き起こされると、スプレッドは基本的に拡大してしまうからです。
2. FXのスプレッドは、なぜ早朝に広がる(高い)のですか?
FXのスプレッドは、早朝に広がりやすい傾向があります。というのも、日本時間の早朝はニューヨーク市場の終盤からオセアニア市場(シドニー市場)に該当し、市場参加者が減って流動性が非常に低くなるからです。
そのため、日本時間早朝、具体的には午前4~8時ごろについては、スプレッドの拡大に注意する必要があります。
3. スプレッドが広がる理由はどのようなものがありますか?
スプレッドが広がる理由は、主に以下のようなものがあります。
- 重要な経済指標の発表
- 流動性が低い
- 戦争の発生など相場の急変
4. FXでスプレッドが狭いことのメリットは?
FXではスプレッドが狭いと、取引コストが低くなります。つまり、スプレッドが狭いと利益を狙いやすいということです。
スプレッドはFX業者の実質的な手数料でもあり、できる限り狭い方が取引で有利になります。
5. FXの取引では手数料がかかりますか?
FXの取引では、基本的に手数料はかかりません。スプレッドがFX業者の実質的な手数料となります。
6. 「スプレッド拡大」とはどういう意味ですか?
「スプレッド拡大」とは、FXの取引において、買値と売値の差額であるスプレッドが広がることを意味します。「スプレッドが開く」、「スプレッドが高くなる」などと呼ばれることもありますが、全て同じ意味です。
7. スプレッドの「原則固定」とは何ですか?
スプレッドの「原則固定」とは、特殊なケースを除いて各通貨ペアに定めたスプレッドを原則的に固定化していることを意味します。売り値や買い値が変動する際でも、スプレッドは常に一定の数値を保つことになります。
8. 流動性が低くなる日はありますか?
クリスマスや年末年始は、欧米の市場参加者が取引から離れる傾向が強く、流動性が低くなりがちです。
9. FXのスプレッドはいつ支払っているのですか?
FXのスプレッドは、取引の損益に反映されます。よって、スプレッド分のコストを別途支払ったり、口座の残高から引かれたりするようなことはありません。
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