※2024年6月17日11時23分更新
今週はユーロにとって試練の週となる。フランスの政治的不透明感が、米CPIの一時的な恩恵を打ち消す勢いで高まっている。テクニカル分析からみたユーロ/ドル、ユーロ/英ポンドの重要な水準とは?
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ユーロ相場分析 - EUR/USD、EUR/GBP
- フランスの政治的混乱が引き続き懸念材料
- 政治的不安が米CPIによる安堵感を凌駕し、ユーロは不安定な展開に
- ユーロ/英ポンドは昨年11月以来の最大週間下落率へ
フランスの政治的混乱が引き続き頭痛の種
欧州の債券市場ではここ最近、安全志向の高まりから独仏債のスプレッドが拡大し、債券市場における投資家の不安を示している。フランス債は下落、ドイツ債に対する上乗せスプレッド(利回り)は大きく拡大しており、欧州大陸における神経質な投資行動が現れている。欧州全体で債券のリスクプレミアムが上昇すると、ユーロ安になる傾向がある。債券スプレッドに関してはイタリア、ドイツ間のBTP-Bundスプレッドも注目に値する。
投資家が安全な投資先を求めるとき、欧州連合(EU)域内のリスクの高い債券(特にポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペイン、そして最近の政治情勢からフランス)から、ユーロ圏内で最も安全性が高い債券と見られているドイツ債に資金を移動させる傾向がある。
先週金曜には、フランスの左派政党が、定年退職年齢の引き下げ、給与とインフレの関連性、富裕層への富裕税導入などを盛り込んだ同盟マニフェスト(宣言書)を発表する予定だ。欧州議会選挙でマリーヌ・ルペン氏率いる極右政党(国民集会、RN)に大敗したマクロン大統領が解散総選挙を表明した中でのこの同盟発表は、フランスの政治情勢をより混迷化させそうだ。総選挙の初回投票は6月30日で、それまでユーロ相場とフランスの代表的な株価指数CAC40指数は弱含みで推移すると予想される。
欧州債券相場が示す投資家の懸念
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
政治的不透明感が米CPIによる回復を凌駕
先週のユーロ/ドルは大きく振れる展開となった。5月の米消費者物価指数(CPI)が予想を下回り、2%に向かうディスインフレの軌道に戻ったとみられたことを受け、ユーロは急騰した。しかし米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレに対するタカ派的な見方を示したため、この上昇は短命に終わった。FRBは今年3月に3回の利下げを予想していたが、現在は1回の利下げにとどまるとみている。
また、フランスの政治情勢の混迷が米CPIによる一時的な安堵感を凌駕し、ユーロ/ドルは1.0724を軽々と割り込んだ。週足では1.0656が視野に入り、その下にはスイングロー1.0600が控えている。今週は、6月の購買担当者景気指数(PMI)速報値やZEW景況感指数、ドイツの消費者信頼感指数以外は、目立った経済イベントはなさそうだ。
ユーロ/ドル 週足チャート
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
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変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -6% | 7% | 0% |
週次 | -16% | 17% | -3% |
ユーロ/英ポンド、昨年11月以来の大幅下落へ
ユーロ/英ポンドは14日、続落した。2021年4月に大幅下落を食い止め、その後現在までサポートレベルとして機能していた0.8472を大幅に割り込んだ。
先週金曜の終値は、この軟化の動きが続くことを示唆するだろうが、今後2週間でより多くの情報や世論調査が明らかになる中、ユーロは弱いままである可能性が高い。0.8340が次のサポートとなる可能性があり、0.8472がサポートからレジスタンスに転じるだろう。
来週は英国のインフレ発表とイングランド銀行(BOE、中央銀行)の金融政策決定会合が予定されており、ユーロ/英ポンドの動向に注目が集まる。4月の英インフレ率は伸びが鈍化し、最新の失業保険申請者数は2021年2月以来最大となる5万人を超え、雇用市場では緊張が高まっている。このような経済状況は、BOEに今年の利下げ実施を思いとどまらせる可能性がある。
ユーロ/英ポンド 週足チャート
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
--- DailyFX.com リチャード・スノー著
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