※2024年2月19日11時55分更新
先週火曜発表の米CPIに続き、先週金曜に発表された米生産者物価指数(PPI)も予想を上回り、今週もドル高継続を背景に金、銀は上値が重くなりそうだ。ただ、金と銀の週足と日足のチャートはそれぞれ違った方向性を示している。
金の週間見通し:弱気
- 金価格は引き続きドルと米国債利回りに連動
- とはいえ金/ドルは下げ渋る – 2,010ドルが引き続き鍵に
- 銀価格は目先レジスタンスに直面するも、長期的には底固めへ
- このレポートは、チャートパターンと主要なサポートとレジスタンスを利用して分析しています。テクニカル指標に関する詳細な内容については、当社の学習コンテンツをご覧ください
金価格は引き続き、ドルと米国債利回りに連動
先週金曜に発表された米生産者物価指数(PPI)は予想を上回り、先週火曜発表の米消費者物価指数(CPI)に続いて米インフレの頑固さが示された。これを受け、ドルと米国債利回りは週末にかけて上昇した。下図は、米2年債利回りとドル指数(DXY)の推移を示している。
今年に入って米国債利回りとドルが上昇したのは、米金利は低下傾向にあるものの、米国経済が予想を上回るペースで成長を続けているためだ。米国内総生産(GDP)成長率は2023年7-9月期(第3四半期)が4.9%、同年10―12月期(第4四半期)が3.3%で、いずれも上振れた。アトランタ地区連銀の予測モデル「GDPナウ」は、現在のデータに基づくと2024年1-3月期(第1四半期)のGDPは2.9%増加すると予測している。この数値は昨年10―12月期からのペースダウンを意味するかもしれないが、再度、予想を上回る可能性があると見ている。
したがって、米連邦準備制度理事会(FRB)による最初の利下げがますます遠のき、それに伴いドル高と市場の利下げ期待の後退はさらに進むかもしれない。
米2年債利回りとドル指数
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
加えて、世界各地で勃発した紛争が長引いている中、金価格の30日インプライドボラティリティは引き続き低下している。つまり、現在のボラティリティの低下は、貴金属の上昇のポテンシャルを制限する可能性がある。
30日インプライドボラティリティ (GVZ)
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
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金は下げ渋り - 2,010ドルに引き続き注目
先週の金価格は2,010ドル付近のサポートゾーンを下回って引けるかに見えたが、下げ渋り、下落分をやや取り戻して引けた。週足チャートではサポートゾーンへの圧力が持続している。値動きが狭まっており、この展開は2,010ドル割れへの再トライは時間の問題であることを示唆している。来週予定されているイベントリスクは比較的少ないが、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨と米購買担当者景気指数(PMI)の発表が米国経済を取り巻くポジティブなセンチメントに拍車をかける「インパクトの大きい」イベントとなる可能性があり、強い内容となった場合は金相場の足かせとなろう。
金価格がサポートゾーンを下回って引けた場合、次の注目レベルは、以前スパイクロー(下落が続いた後の安値水準で下ヒゲの長いスパイクが発生すること)が発生した1,984ドル、1,973ドルとなりそうだ。レジスタンスとして堅いのは2,050ドル、次いで2,075ドルだが、現在の水準からはまだ遠い。
金価格 週足チャート
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
日足チャートは、金価格が短期的に強気な見通しを示している。先週金曜の金相場は、先週木曜に示現した明けの明星(青でハイライト)が示す方向性に沿って、取引終了間際に上昇した。
このローソク足パターンは、相場の底あるいは成熟した下降トレンド局面で出現し、弱気の勢いが急になくなり、その後上昇に転じることを示唆する初期の貴重なシグナルである。強気へ反転する前には1,985ドル(それまでのレジスタンス)でサポートされていた。
金価格 日足チャート
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
銀は目先、レジスタンスに直面も、長期的にはもみ合いか
週足チャートで見ると、銀価格は2021年から2022年にかけての大幅下落のフィボナッチリトレースメント38.2%の水準(22.45ドル、赤線)がサポートとなる傾向が強まっている。価格は先週金曜、再びこの重要な水準の下方ブレイクを試みたが、成功しなかった。したがって、一歩引いて考えてみると、銀価格は23.90ドル、さらには25.00ドルに向かう長期的なミーン・リバージョン(平均回帰性、mean reversion)の最中にあるように見える。
銀価格 週足チャート
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
しかし、日足チャートでは、銀価格は50日単純移動平均線(SMA)と200日SMAというレジスタンスに直面しているようだ。この200日SMAは、今年に入ってから銀相場の主要なレジスタンスとして機能しており、銀価格の上値を抑制している。
銀価格がこの強気の攻勢にどのように反応するか、今後1週間は注意深く見守る必要がある。今年これまでの銀相場はこのレジスタンスを上抜けすることができずにいるため、23.30ドルを再び試す展開もあり得る。
銀価格 日足チャート
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
--- DailyFX.com リチャード・スノー著
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