私たちはトレーダーとして、取引の開始と決済のタイミングを見極めることに多くの時間を費やしています。しかし、そのタイミングと同じくらい、どのように取引を始めるかも重要です。この記事では、ポジションのスケールインとスケールアウトについて、また、それをどのように現在の取引戦略に活かせるかという点についてご説明します。
本記事の主なポイント:
- 成功する戦略の多くで、ポジションのスケールインとスケールアウトが行われています。
- 利益が出ているポジションの取引を追加したり、部分的に決済したりするだけです。
- このような取引の増減は、何pipsという狭い範囲ではなく、レジスタンスラインなどのキーレベルに設定しましょう。
スケールインとスケールアウトとは?
利益を得ているトレーダーが徐々にポジションのサイズを調整するのには、いくつかの理由があります。高度なテクニックとして、大規模な取引を行う際に発生するスリッページ(注文価格と実際の取引価格の差)を最小限に抑えることや、他のトレーダーに自分の大きなポジションを見せないようにすることなどがあります。しかし、最も主要な目的は、既に利益を生んでいる取引からさらに利益を引き出すことです。
取引がうまくいくと、取引量が大きいほど利益も大きくなります。そのため、トレーダーは最初は小さくスタートし、利益が出始めたら徐々に取引量を増やしていきます。この方法では、リスクを最小限に抑えながら、利益を最大化するチャンスを広げることができます。この戦略を「スケールイン」と呼びます。
一方で、「スケールアウト」はスケールインの逆のアプローチです。取引が目標の利益に到達した時にポジション全体の決済は行わず、その代わりに部分的に決済し、残りのポジションがさらに利益が出る領域まで動くチャンスを狙います。こうして利益を確保すると同時に、さらなる利益を得るための可能性を残しておくのです。また、最初の利益目標に到達した時点で、損切りのための逆指値注文を収支がとんとんになるかプラスになるところに動かすことも一般的です。そうすることで、未決済の残りのポジションはほとんど「リスクが無い」ことになります。
スケールインとスケールアウトのメリット
スケールインとスケールアウトには、以下のようなメリットがあります。
利益が確保できる
スケールアウト戦略では、取引を行う際、あらかじめ決めた価格レベルに到達した時にポジションの一部を売って利益を確定します。この方法は、市場の不確実性や価格の急変に対応するのに役立ち、予期せぬ市場の動きによって利益が減らされるリスクを抑えます。
実際には、取引開始時に複数の利益確定点を設定します。これらの点に価格が達したときに、トレーダーはポジションの一部を売却して利益を手に入れます。このプロセスを繰り返すことで、全体のポジションを少しずつ減らしながら、段階的に利益を確保していきます。
この戦略のメリットは、市場の変動に完全に依存せずに利益を少しずつ確定できる点です。さらに、ポジションの一部を維持することで、市場がさらに好転した場合に追加利益を狙うことも可能です。スケールアウトは、利益を守りつつ、市場のチャンスを活かす戦略として効果的です。
柔軟な対応が可能になる
スケールアウト戦略は、市場の変動に対する柔軟な対応を可能にします。この方法では、トレーダーは市場の動きに応じて自分のポジションのサイズを調整できます。具体的には、市場が予想通りに動いて利益が出た時、ポジションの一部を売却して利益を確定します。これにより、市場が反対方向に動いても、すでに得た利益を守ることができます。また、残ったポジションを保持することで、市場がさらに好転する可能性を捉えることができます。
この戦略を使うことで、市場の不確実性に対応しながら、リスクを管理し、利益のチャンスを最大限に活用できます。特に予測が難しい市場状況で有効な方法です。
トレード時のストレスを軽減
取引をいつ終了するか、つまりエグジットポイントを決めるのは、トレーダーにとってストレスの多い作業です。一箇所で全てのポジションを閉じる方法では、市場の急変動によって大きな利益を逃す可能性があります。そこで、複数のエグジットポイントを設定して取引を段階的に終了させるのが効果的です。
この方法では、トレーダーは取引の目標となるいくつかの価格レベルを予め決めておきます。市場がこれらのレベルに達するごとに、ポジションの一部を少しずつ閉じていきます。これにより、市場が予想外の動きをしても、一部の利益は確実に手に入れることができます。さらに、市場がより良い方向に進めば、残ったポジションから追加の利益を狙うこともできます。
エグジットポイントを分散することで、一度に全ての利益を失うリスクを減らし、より安定した収益を得ることが可能になります。また、市場の不確実性に対するストレスも軽減され、計画的で落ち着いた取引が行えるようになります。
スケールインとスケールアウトの使い方
取引においてスケールインとスケールアウトを行う利点を理解したところで、では、これらの手法をどのような状況で使うべきでしょうか?
レジスタンスライン突破を利用したポジションの追加
(Trading Station Desktop Platformでチャート作成)
スケールイン戦略として最も王道なのは、レジスタンスライン突破を利用したポジションの追加です。上記のチャートでは、「直近の高値を最初に上抜け後、ロングポジションを追加」というルールでポジションを追加しています。
レジスタンスライン突破に合わせてポジションを追加することで、リスクを分散させつつポジションを増やしていくことが可能となります。
複数の指値注文によるスケールアウト
ポジションを追加したら、どこで決済するかを考える必要があります。上記のチャートでは、「次のレジスタンスラインになりそうな水準のすぐ下で決済して利益確定」というルールで決済しています。
ポイントとなるのは、最初のレジスタンスラインで取引全体を決済してすぐに利益確定するのではなく、分散して利益を確定する点です。取引の一部を残しておくことで、より多くの利益を得ることが可能となります。
スケールインとスケールアウトを使う時の注意点
スケールインとスケールアウトは利益を増やし、損失を減らすのに有効な手法ですが、いくつか気をつけなくてはならない点があります。やり方によっては損失を増やしてしまうことにつながるので、注意点を意識しつつ利用しましょう。
負けポジションには追加しないこと
(写真:Fort Worth Star-Telegram ロン・ジェンキンス)
スケールインとスケールアウトは、既に利益を上げているポジションにのみ追加することを徹底しましょう。明らかに損失が生じている場面で大事な資金をつぎ込むと、損失が膨らむことになります。火に油を注ぐことにならないよう、負けている時は早めに見切りをつけるのが最善です。
もし、取引が不利に進んでいて、自分の判断が間違っていることが明白なら、部分的にポジションを決済してもあまり意味がありません。将来的に状況が好転することが期待される場合を除き、損切りが優先されるべきです。
取引の利益目標は複数設定する
取引の利益目標を設定する際には、一つの目標だけでなく、複数の目標を設定することが有益です。例えば、2つまたは3つの異なる価格レベルを利益の目標として設定し、それぞれのレベルでポジションの一部を決済することができます。利益目標を分けることによって、市場の動きに柔軟に対応し、利益を段階的に確保することが可能になります。
指値設定だけで決済をせずに柔軟に対応する
さらに、取引の一部については、指値注文を設定せずにおくことも一つの戦略です。この場合、市場のインジケーターやトレーリングストップ(利益を確保しつつ損失を限定するために、市場価格に追随して動くストップ注文)を利用して、最適な決済タイミングを判断します。最適なタイミングで決済できるようになれば、市場のさらなる有利な動きに対応し、追加の利益を狙うことができます。
手あたり次第にポジションを追加することは避ける
私が考えるスケールインの方法は、普段取引を始める時と同じですが、取引の開始を正当化できるタイミングの地点を複数見つけるというものです。最初の取引開始地点から50、100、200pips離れたところに手あたり次第に追加することは避けてください。最初に取引を始めた時と同様に、取引を追加する理由も必要です。
スケールインとスケールアウトで損小利大を目指そう
FXにおいて大きな利益を得るには、取引戦略の理論が重要です。しかし、理論だけでなく、「どのように取引を開始し、決済に至るか」も大切です。スケールインとスケールアウトは利益を増やすだけでなく、時にはリスクを低減させます。今回ご紹介したスケールインとスケールアウトの戦略を取引に取り入れて、損小利大のトレードを実現させましょう。
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