※2024年4月23日16時15分更新
注目の米経済指標の発表と米ハイテク大手の決算発表を控える今週、リスクセンチメントは改善して始まり、リスクに敏感な資産全体で顕著な動きが見られた。金・銀価格、S&P500種株価指数の見通しを探る。
リスク資産の分析(金・銀価格、S&P500)
- 週明け22日の金価格は過熱感から反落
- 銀価格はレジスタンスゾーンを試した後に下落
- 米ハイテク決算がS&P500の押し上げ要因になるか
- このレポートは、チャートパターンと主要なサポートとレジスタンスを利用して分析しています。テクニカル指標に関する詳細については、学習コンテンツをご覧ください
週明けの金相場は過熱感から一服
今週の金融市場は、イスラエルとイランの一触即発の攻防が幕引きを図ろうとする中、リスク選好の動きが強まって始まった。
金価格、銀価格、オーストラリアドル、米国株など、多くの市場が安堵しているように見受けられる。リスク資産に連動して動くことが多い豪ドルは、先週金曜午後から部分的に回復し、きょうに至っている。
金価格は先週金曜まで、安全資産としての魅力に支えられ上昇した。今週に入り、そのような強気の勢いは一段落し、金価格は反落。2022年3月9日以来の大幅な下落率となった。
中東におけるより広範な紛争の可能性は低まったと市場は判断しているため、金価格のインプライド・ボラティリティも顕著に低下している。
30日インプライド・ボラティリティ (GVZ)
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
金市場の取引には、地政学的緊張や戦争の影響だけでなく、需要と供給のような価格を決定するファンダメンタルズ要因を十分に理解することが必要だ。包括的な金相場の第2四半期予測を読んで、この先に何が待ち受けているのかを把握しましょう。
金価格見通し:ようやく「正常な」レンジを回復
金価格は先週金曜の上昇を除けば、2,341ドル付近の史上最高値になかなか接近できず、週明け22日には大幅反落した。金価格の次のサポートは2,319.50ドル(2,320ドル)で、これを下抜けすると2,222ドルへ向けてさらに下降する可能性がある。
金価格は長期にわたって買われ過ぎの領域で取引されてきたが、ようやく「正常な」レンジに回帰した。ゴールドは従来とは異なり、ドル高や米国債利回りの上昇を受けにくいことが証明されてきたが、リスク選好が高まったように見える今、利子のつかないゴールドもその影響を受け始めるだろう。さらに、堅調な米データを背景に、市場は年内の利下げを見送るとの見方を強めており、その予想はドルを支え、金価格には重しになろう。
金価格 (XAU/USD) 日足チャート
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
同様に、銀価格も22日は顕著に下落した。週足チャートでもその動きは見られるが、まだ週初日にすぎない。銀価格は28.40ドル付近がレジスタンスゾーンとなっており、現在2021―2022年の大幅下落のフィボナッチ・リトレースメント78.6%の水準を下回って取引されている。さらに弱気な勢いが続くと、以前レジスタンスとして機能していた26.10ドル、そしてフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準25.30ドルが注目されよう。
銀価格 (XAG/USD) 週足チャート
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
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S&P500見通し:一段高のきっかけになるか、米ハイテク決算に注目
ボラティリティ指数(VIX)は、長い時間軸(下図の月足チャート参照)で見た場合、低水準からほとんど上昇していない。VIXは恐怖指数とも呼ばれており、株式相場が下落すると上昇する。しかしS&P500種株価指数が昨年10月末以来最大の下げ幅を記録したにもかかわらず、VIXはすでに下降している。
米国では企業の決算シーズンが到来しており、今週はテスラ(TSLA)、メ(META)、アルファベット(GOOG)、マイクロソフト(MSFT)など主要なハイテク銘柄企業の決算発表が控えている。
ボラティリティ指数(VIX):S&P500の30日インプライド・ボラティリティ
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
S&P 500種指数は先週、史上最高値から5%超後退していたが、22日の寄り付きで反発した。とはいえ、心理的水準5,000の大台にはわずかに届かなかった。ニューヨーク地区連銀のジョン・ウィリアムズ総裁がタカ派的な発言をしたこと、そして米国のデータが依然として堅調であることから、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測は後退している。実際、ウィリアムズ総裁は、年初来のインフレ率の上昇について言及した際、手持ちのカードに利上げの可能性を加えた。
強気相場の大部分は、2024年に複数回の利下げが実施されるとの幅広い予想に支えられていたが、市場はFRBによる2回の利下げすら想定しておらず、現在の状況は少し前と大きく異なっている。FRBはまた、政治からの独立性を重んじ、米大統領選挙中の利下げは避けると見られる。マイクロソフトのように人工知能(AI)事業に力を入れている企業銘柄は、この決算シーズンで注目されるだろう。米国株を50日単純移動平均線に向けて再び押し上げるためには、ポジティブな決算報告と楽観的な業績見通しが必要かもしれない。
S&P500 日足チャート
資料:TradingView、チャート作成:リチャード・スノー
--- DailyFX.com リチャード・スノー著
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