外国為替市場は24時間開いていますが、トレーダーは市場のすべてを監視できません。その際に、指値・逆指値注文が役立ちます。指値・逆指値注文とは、トレーダーが事前に通貨の売買価格を設定することです。指定した価格に到達した場合にのみ実行されます。
本記事では、FXの指値・逆指値注文の概要や活用方法とメリット、注意点を紹介します。
FXの指値・逆指値注文とは?
まず、FXの指値・逆指値注文について解説します。
そもそもFXのエントリー注文とは?
FXのエントリー注文とは、通貨ペアに対して指定した価格で執行される注文のことです。この価格に達した時点で、注文が執行・完了します。価格が希望の価格に達しない場合、注文は執行されません。なお、エントリー注文には指値や逆指値などの種類が複数あるため、FXの注文を実行する前にどれを選択するかを考えておかなければなりません。
トレーダーは、取引が執行される価格水準のエントリーポイントを指定できます。価格水準を指定することで、常に市場を監視していなくても簡単に取引できるようになります。
下図は、新規注文のトレーダーが価格執行水準を設定するパネルの例です。プロセスやレイアウトは、ほとんどの取引プラットフォームで共通しているはずです。
指値注文の概要
指値注文とは、あらかじめ決めた価格(指値価格)で注文を行う方法のことを指します。FX取引においては、この指値注文が一般的な注文方法です。具体的には、2つのシチュエーションで利用されます。「現在価格よりも低い価格で買いたい」場合と、「現在価格よりも高い価格で売りたい」場合です。指値注文は、自分が希望する価格で取引できるため、戦略的な取引を行う際に役立ちます。
逆指値注文の概要
逆指値注文とは、市場価格が一定の価格に達した時点で、新規の注文(売り・買い)を自動的に発注する取引方法のことです。「指定した価格より値上がりしたら買い」、または「指定した価格より値下がりしたら売り」となり、指値注文とは逆の注文方法です。逆指値注文は、リスク管理や急な相場変動への対応に用いられます。
逆指値注文の使い方は、以下の2つです。
- 売り注文の場合:現在の価格より低い価格を指定します。指定価格以上になった場合、自動的に売り注文が成立します
- 買い注文の場合:現在の価格より高い価格を指定します。指定価格以下になった場合、自動的に買い注文が成立します
逆指値注文は、特定の価格で損切りする際や、利益を確定する際に使用されます。あらかじめ設定しておくことで、不測の事態や急な相場の変動にも対応できます。FXは24時間取引可能なため、逆指値注文をうまく利用すれば、取引チャンスを逃さない戦略を立てられるでしょう。
FXの指値注文と逆指値注文の違い
次に、指値注文と逆指値注文の違いを解説します。
取引のタイミング
FX取引における指値と逆指値の違いは、その取引のタイミングが挙げられます。指値注文は、「ある価格になったら売買を実行したい」と事前に指定する注文方法です。例えば、現在の米ドル/円の価格が100円で、これが105円まで上がったときに売りたい場合、指値注文を利用します。
一方、逆指値注文は「ある価格を超えたら売買を実行したい」と事前に設定します。同じく米ドル/円の価格が100円で、これが95円まで下がったときに売りたい場合には、逆指値注文を使用するのが適切でしょう。
つまり、注文方法の選択は予想する価格変動の方向性と、それに対する取引戦略によって決まると言えます。
リスク管理の視点
FX取引におけるリスク管理は非常に重要な要素です。その観点から、指値注文と逆指値注文の役割を比較してみましょう。
まず、指値注文はあらかじめ設定した価格に達したときに注文が発動します。これは、予測した価格動向が実現したときに利益を確定するための注文方法です。そのため、リスク管理の観点からは、想定した通りの利益を得るためのリスクヘッジと言えます。
一方、逆指値注文は、設定した価格を上回るか下回るときに注文が発動します。これは、相場の急激な動きによる損失を防ぐための手段で、リスク管理において重要な役割を果たします。
これらの注文方法を利用することで、FX取引におけるリスクを適切にコントロールすることが可能になります。
利益確定や損切りの戦略
指値注文と逆指値注文は、利益確定や損切りの戦略において重要な役割を果たします。まず指値注文の場合、例えば現在のレートが1ドル100円で上昇すると予想した場合には、102円を指定して指値注文を設定します。結果として、レートが102円に到達した時点で売却することで利益を確定できます。
一方、逆指値注文ではリスク管理に重きを置きます。例えば、1ドル100円で取引を開始し、万が一98円まで下落した場合には大きな損失を出す可能性があります。そこで、逆指値を99円に設定しておけば、レートが99円まで下落した時点で自動的に売却され、損失の拡大を防ぐことが可能です。
指値注文の活用方法とメリット
指値注文の活用方法とメリットを紹介します。
期待する価格で取引できる
FX取引において指値注文の大きなメリットは、期待する価格で取引が可能となる点です。
FX取引では、通貨ペアの相場が上昇した際に利益を得る「買いポジション」と、逆に下落した際に利益を得る「売りポジション」を利用します。
例えば、現在1ドル=105円で、1ドル=103円になったときに買う場合、指値注文を利用することでその価格で取引できます。指値注文を使うと、注文した価格になった時点で自動的に注文が成立し、価格の上昇下降を気にすることなく取引が可能となります。これにより、トレーダーは自身の戦略どおりの価格で確実に取引できます。
時間的な制約を受けない
トレーダーは、1日にどれだけの時間を取引に費やしているかを考えてみましょう。ほとんどの場合(1日の平均的な時間で考えると)、10分から1時間程度の短い時間になるはずです。なぜなら、多くの人が本業や家族との時間等、優先すべきものがあるからです。
この時間を外国為替市場が開いている1日(24時間)と比較してみると、トレーダーが1日の中で10分間取引を行う場合、市場を見ている時間は1日の0.7%になります。1日のうち1時間使うとして、4%程度です。そのように考えると、トレーダーが市場から離れている残りの96%の時間に、最適なタイミングが訪れる可能性のほうがはるかに高くなります。つまり、短い時間帯の中で無理して取引すると、最適ではないエントリーになってしまう可能性があります。
指値注文を利用することで、時間的な制約を受けないこともメリットです。指値注文を設定しておけば、トレンドラインに到達したときや、価格がチャネルを抜けた瞬間にPCやスマートフォンの前で注文を執行する必要はありません。そのため、指値注文は、最適な価格で約定できる最良の方法と言えます。
自動で利益確定が可能
指値注文を設定しおけば、注文が執行された場合でも取引を管理できます。例えば、ある通貨ペアを100円で購入したとします。その後、価格が120円に上昇すると予想している場合、指値注文を120円で設定します。その後、価格が120円に到達した時点で自動的に売却が行われ、利益が確定します。管理できない取引が無防備な状態で執行されることはない、という安心感を得られることもメリットの1つです。
逆指値注文の活用方法とメリット
逆指値注文の活用方法とメリットを紹介します。
損切りを自動的に実行可能
逆指値注文を利用すれば、市場が予想外に動いたときの損切りを設定できます。
具体的には、以下の手順で逆指値注文を行います。
- ポジションを持っている通貨ペアの価格が、予想と逆方向に動いた際の「損切り価格」を設定する
- その価格に達すると自動的に売買注文が発生し、損失額をおさえられる
これにより、相場が急変した際でもリスクを管理しやすくなります。また、一定の損失は許容範囲内と割り切り、無理な取引を防ぐことも可能です。そのため、逆指値注文は安全な取引を実行するための重要なツールと言えます。
利益チャンスを逃さない
FX取引では、急な相場変動が利益獲得のチャンスとなることがあります。しかし、常に相場を監視し続けることは難しいでしょう。この場合、逆指値注文の利用がおすすめです。
例えば、最高値を抜けて上昇トレンドが発生すると予想している場合、現在のレートよりも高い価格で新規の買い注文を設定しておけば、相場が一旦下落してから上昇した際に自動的に注文が約定します。これにより、予想外の上昇トレンドに乗ることで、結果として利益を確保できる可能性が高まります。逆指値注文を活用すれば、見込みのある利益チャンスを逃すことなく、効率的かつ自動的に取引を行うことが可能となります。
カスタムタイムフレームでの取引は、取引市場に応じた今後の市場ニュース、政治的イベント、企業の業績にあわせてより細かく条件を指定して取引ができます。下図のように、トレーダーはエントリー注文の有効期限を指定できます。
- 「Good till cancelled」:エントリー注文は、トレーダーが手動で削除するまで有効です。
- 「Good till date」:エントリー注文は、指定された日付まで有効です。
FXで指値・逆指値注文を利用する際の注意点
指値注文や逆指値注文を設定するには、FXのエントリー注文を行う際に、取引チケットの「Stop」と「Limit」フィールドに入力します(下図参照)。
この方法で設定した逆指値注文と指値注文は、エントリー注文が執行され、IG証券の口座で取引が開始されるまで有効になりません。つまり、エントリー注文がヒットする前に逆指値注文や指値注文が執行される心配はないということです。
ただし、指値・逆指値注文を利用する際の注意点を理解しておく必要があります。指定した価格にレートが達しなかった場合、注文は約定(取引が成立)しません。例えば、現在の為替レートが1ドル100円の場合に、「指値注文」で1ドル105円で購入するよう指示したとします。しかし、その後の相場が上昇せず、105円に到達しなかった場合は指値注文が約定されません。つまり、指値注文と逆指値注文は、目標とする価格がレートから大きく離れている場合は取引が成立しないことを覚えておきましょう。したがって、狙った価格で取引を行うためには、相場の動向をしっかりと把握し、適切な価格を設定するスキルが求められます。
指値注文と逆指値注文をうまく活用してFX取引を有利に進めよう
指値注文と逆指値注文は、どちらも価格の動きを予想して注文する方法です。うまく活用すれば、利益確定や損切りに役立つでしょう。また、逆指値注文は急な相場変動から資金を守るために欠かせません。ただし、価格を指定するためには市場の動向を予測するスキルが必要になります。まずはデモ口座などでFXの取引に慣れることから始めて、テクニカル分析やファンダメンタルズ分析などを学ぶことがおすすめです。
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