この記事のポイント
- 現在の米株高はエヌビディア頼みの状況にある
- 今日は6月のPMI速報値で上下に振れる展開が予想される
- S&P500指数は、短期的な調整の反落を警戒する局面にある
- しかしトレンドの軸は株高にある、焦点は5,580ポイントのトライ
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -2% | 3% | 1% |
週次 | -1% | 0% | 0% |
エヌビディアの上昇に支えられている米株高
20日のS&P500種株価指数(SPX)は、5,500ポイントを突破する局面が見られたものの、上昇が続かず反落した。
セクター別のパフォーマンスを確認すると、11業種のうち下落したのは3業種だけだった。特にリスク回避のムードが高まったわけではない。
それにもかかわらず指数が下落した主因は、情報技術セクターの売りにある。この日は1.6%下落した。
S&P500種株価指数 セクター別パフォーマンス:6月20日
ブルームバーグのデータをもとに筆者が作成
エヌビディアの売り→半導体株の売り→情報技術セクターの売り
情報技術セクターが下落した主因は、主力半導体の売りが要因だった。
特にエヌビディア(NVDA)の下落が大きく影響した。この日、同社の株価は前日比で4.8ドル安の3.5%安となった。
エヌビディアに追随し株高の基調にあるブロードコム(AVGO)も、前日比で67.96ドル安の3.7%安で引けた。
これら主力半導体株の売りが、情報技術セクターの下落をけん引するかたちとなった(下のチャートを参照)。
S&P500情報技術セクター 各業種の動向:6月20日
ブルームバーグのデータをもとに筆者が作成
エヌビディア頼みの株高
こちらの米国株レポートで指摘したとおり、現在の米株高はグロース株の上昇に支えられている。そのグロース株は半導体株の上昇に支えられている。
そして半導体株の上昇は、エヌビディア(NVDA)の上昇がけん引役となっている(下のパフォーマンスチャートを参照)。
アメリカ半導体株の動向:年初来
ブルームバーグのデータをもとに筆者が作成
調整の売り材料を探す市場
しかし、短期間でエヌビディア(NVDA)とS&P500種株価指数(SPX)の上昇幅が拡大した状況を考えるならば、今の米国市場では高値警戒感が意識されやすい。ゆえに、市場参加者は調整の売りの要因を探す状況にあると言える。
その要因として今日注目したいのが、6月の購買担当者景気指数(PMI)速報値である。近年、企業の景況感を知る上で重要性が増している経済指標である。
6月は、5月から若干ながら企業の景況感が低下する見通しとなっている。
5月の小売売上高では、個人消費の鈍化が確認された。この状況で6月PMI速報値までが予想以上に弱い内容となれば、「景気の先行きリスク」が調整の要因(売り要因)として利用されることが予想される。
S&P500種株価指数は、下で述べるチャート水準のトライを想定しておきたい。
米国 購買担当者景気指数(PMI)の動向:過去1年間
ブルームバーグのデータをもとに筆者が作成 / 赤のドット:6月の市場予想
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推薦者: 石川順一
S&P500指数、目先の展望とチャート分析
5,400ポイントの維持が焦点に
調整売りの圧力が高まり、S&P500種株価指数(SPX)が下値をトライする場合、目先の焦点は5,400ポイントの維持となろう。
まずは、5,450~5,460ゾーンの攻防に注目したい。昨日の下落を止めた5日線が現在、5,460レベルで推移している(下の日足チャート、青ラインを参照)。すぐ下の5,450レベルは「サポート転換」を意識する水準である(下の1時間足チャートを参照)。
S&P500種株価指数が5,450レベルをあっさりと下方ブレイクする場合は、10日線のトライを想定しておきたい(下の日足チャート、緑ラインを参照)。この移動平均線は現在、5,415ポイント前後まで上昇している。
S&P500種株価指数が10日線を下方ブレイクする場合は、5,400ポイントをトライするサインとなろう。
5,400ポイントを下方ブレイクする場合の焦点は?
調整売りが止まらず、S&P500種株価指数(SPX)が5,400ポイントを下方ブレイクする場合は、5,375ポイントまでの反落を警戒したい。このチャートポイントも「サポート転換」を意識する水準である。
すぐ上の水準5,385ポイントは、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準にあたる(下の1時間足チャートを参照)。5,375~5,385がサポートゾーンとしてS&P500種株価指数を下支えすることが予想される。
上昇の局面では5,580ポイントのトライが焦点に
S&P500種株価指数(SPX)は調整の反落を警戒する局面にある。しかし、米金利の上昇が抑制されている状況はエヌビディアをはじめとした半導体株にとっては追い風である。
短期金融市場が織り込む9月の利下げ確率も60%前後で推移している。
さらに、5月の重要な物価指数はいずれも鈍化した。
これらの状況で6月のPMI速報値が予想以上に強い内容となれば、「インフレは鈍化しているが景気は底堅い」という思惑がS&P500種株価指数を下支えしよう。
S&P500種株価指数が反発する場合、目先の焦点は、昨日の上昇を止めた5,500ポイントの完全突破である。
これを達成する場合は、フィボナッチ・エクステンション100%の水準5,580レベルを視野に上昇幅の拡大を予想する(下の日足チャートを参照)。
時間足のストキャスティクスとRSIで相場の過熱感を追い、これらが買われ過ぎ(売られ過ぎ)の水準でデッドクロス(ゴールデンクロス)の状況にある時、S&P500種株価指数が上で述べたチャートの水準をトライする場合は、反落(反発)へ転じる可能性を意識したい(下の1時間足チャートを参照)。
S&P500種株価指数のチャート:日足 昨年12月以降
TradingView提供のチャートで作成
S&P500種株価指数のチャート:1時間足 6月以降
TradingView提供のチャートで作成