FXの証拠金とは、レバレッジをかけた取引をするために必要な最低限の資金のことで、FXを取引する際のリスク管理に有効な手段です。ただし、FXの証拠金は多くのトレーダーにとって不慣れな概念であり、誤解されていることがあるでしょう。また、FXの証拠金と密接な関係にあるのがマージンコールで、トレーダーはそれにも注意を払わなければなりません。なぜなら、FXの証拠金やマージンコールについて理解しておかないと、結果として大きく損をする可能性があるからです。
本記事では、FXの証拠金とは何か、必要証拠金の計算方法、ロスカットの仕組み、効果的なリスク管理方法を詳しく解説します。
FXの証拠金とは?
FXの証拠金とは、トレーダーが取引を開始するために担保として差し出す、取引証拠金のこと。言い換えると、トレーダーが新しいポジションを建てるために必要な取引口座の最低金額です。通常、FXの想定元本(取引サイズ)の割合で提示され、証拠金と取引全額との差額はブローカーから「借りる」ことになります。
以下のグラフは、全取引サイズに対して必要な証拠金を表したものです。
- 取引サイズ:10,000ドル
- 必要証拠金:3.33%
FX取引は、元手の数%(通常は約4%程度)だけの証拠金で、それ以上の取引が許されるレバレッジ取引を利用できます。したがって、証拠金は元手となる費用でありながらも、その数十倍、数百倍の取引を可能にします。
FXの証拠金によるメリット
FXの証拠金制度があれば、少額資金でも大きな金額の取引ができます。例えば、1,000ドルを証拠金として預ければ、レバレッジが25倍の場合、実質的には2万5,000ドル分の取引が可能。これにより、元手が少なくても大きな利益を狙えます。他の資産を同じ1,000ドルで購入する場合に比べて、投資効率の向上を見込めるでしょう。
また、取引の柔軟性があることもメリット。必要な証拠金は取引する通貨ペアやレバレッジにより変動しますが、それに応じて自由に投資戦略を選べます。
ただし、レバレッジが大きくなればなるほど損失のリスクも大きくなることには要注意。証拠金制度のメリットを活用する一方で、リスク管理も重要です。
FXの証拠金に関する用語
ここでは、FXの証拠金に関する用語を紹介します。
- エクイティ:現在の利益を加え、現金残高から現在の損失を差し引いた後の取引口座の残高を指します
- 必要証拠金:レバレッジをかけて取引するときに必要な資金(保証金)の額です
- 使用証拠金:口座の既存の取引を維持するために確保される口座の資金の一部を指します
- フリーマージン:使用した証拠金を差し引いた後の口座内の資金です
- マージンコール:トレーダーの口座の資金がブローカーの定める許容水準を下回った場合に発生。資本を許容水準まで戻すために、未決済のポジションを即座に清算しなければなりません
- 証拠金水準:使用した証拠金で資金を割ったものに100を掛けた値で、取引口座の資金繰りの良し悪しを示すものです
【参考】FXの証拠金に関する用語を理解した後は、FXの仕組みや取引方法について知りましょう。詳しくは、「FXにおける売り買いの仕組みとは?取引方法やタイミングなどもプロがやさしく解説」をご覧ください。
FXにおける必要証拠金の計算方法と注意点
次に、FXにおける必要証拠金の計算方法や注意点について解説します。
必要証拠金の計算方法
証拠金というと、トレーダーが払わなければならない手数料のように感じますが、取引にかかる手数料ではありません。実際には、口座資金の一部を受入証拠金として確保し、充当するものなのです。
FXにおける必要証拠金の計算方法は、取引したい通貨の為替レートと取引通貨量(1,000通貨など)、レバレッジ比率によって決まります。
例えば、取引したい通貨の為替レートが1ドル100円、取引通貨量が1,000通貨(10万円分)で、レバレッジが25倍(証拠金率4%)の場合、必要証拠金は以下のように計算できます。
必要証拠金=100×1,000×4%=4000円
なお、為替レートや取引通貨量、レバレッジ比率、利用するFX会社によって必要証拠金が変動することに注意してください。
FXの必要証拠金に関する注意点
FXにおける必要証拠金は、ブローカーによって設定されています。規制を順守しつつ、ブローカーが想定するリスク水準(デフォルトリスク)にもとづいています。
以下は、「証拠金維持率」に記載されている、英ポンド/米ドルでの必要証拠金の例です。
上記の例を参考にすると、最初の二段階では、必要証拠金は3.33%と同じですが、次の二段階では4%、15%と拡大します。証拠金取引を行う場合、ポジションを保有するために必要な証拠金の額は、最終的にはポジションサイズによって決定されます。ポジションサイズが大きくなると次のレベルに移行し、必要証拠金(金額)も増加します。
証拠金の必要性を理解したうえで、トレーダーはマージンコールの発生を回避するために、取引口座に十分な資金を確保しなければなりません。
証拠金水準の計算方法
トレーダーが取引口座の状況を簡単に把握する方法の1つに、証拠金水準があります。
証拠金水準の計算方法は以下の通りです。
証拠金水準=(エクイティ÷使用証拠金)×100
例えば、トレーダーが口座に10,000ドルを入金し、現在8,000ドルを証拠金として使用しているとします。証拠金水準は125となり、100を上回っています。証拠金水準が100を下回った場合、通常ブローカーは新規取引を禁止し、マージンコールが発生する場合があります。
トレーダーは、現在のポジションが清算されないよう、ブローカーが指定する強制決済の規則を把握することが不可欠です。マージンコールが発生する事態になった場合は、現在のオープンポジションが清算されるのを避けるために、口座に直ちに入金しなければなりません。なお、ブローカーが清算する理由は、口座の資金を許容水準に戻すためです。
【参考】マージンコールの回避方法については「FXで絶対避けるべきマージンコールとは?4つの回避方法も解説!」でもっと詳しく知ることができます。
FXの証拠金とレバレッジの関係性
レバレッジと証拠金は密接な関係にあります。FXのレバレッジとは、トレーダーが少額の取引資金を調達し、残りをブローカーから借りることで、初期投資額以上のリスク資産を得られる仕組みのこと。自己資金の何倍もの取引が可能となるため、少額からでも大きな利益を狙えることがメリットです。
例えば、証拠金が10万円でレバレッジが25倍の場合、250万円分の取引が可能に。一般的な必要証拠金と、それに対応するレバレッジを以下の表で紹介します。
必要証拠金 | 最大レバレッジ |
---|---|
50% | 2:1 |
3.33% | 30:1 |
2.00% | 50:1 |
0.5% | 200:1 |
ただし、レバレッジによって大きな利益を狙える一方で、大きな損失を被る可能性もあります。レバレッジはブローカーによって異なる場合があり、規制要件に応じて地域ごとに異なることもあります。
参考までに、下表にレバレッジと利益・損失の関係をまとめてみました。
レバレッジ | 証拠金 | 取引額 | 利益・損失 |
---|---|---|---|
1倍 | 1万円 | 1万円 | ±1万円 |
10倍 | 1万円 | 10万円 | ±10万円 |
25倍 | 1万円 | 25万円 | ±25万円 |
上記のとおり、レバレッジが高いほど、利益だけでなく損失も大きくなる可能性があるため、自身のリスク許容度に合わせて適切なレバレッジを選ぶことが重要です。
レバレッジを利用するうえでの注意点と対策
レバレッジを利用すると利益を得るチャンスが増える一方、損失のリスクも同じ倍率で増えます。そのため、レバレッジを高く設定するほどリスク管理を重要視しなければなりません。
以下に、レバレッジを利用するうえでの注意点と対策を紹介します。
- レバレッジを高く設定しすぎると大きな損失を被る可能性があるため、初心者は低めの設定から始めたほうがいいでしょう
- レバレッジを活用する際は、必ずロスカットラインを確認し、それを超えるリスクは取らないようにしましょう
- レバレッジは証拠金を増やすツールであり、リスクを無視するためのツールではありません
FXのレバレッジのメリット・デメリット、リスク管理方法については「FXのレバレッジとはなにか?意味や計算方法、リスク管理について解説」で詳しく知ることができます。
FXにおけるロスカットの仕組みと証拠金との関係性
FX取引のロスカットとは、証拠金が一定額以下になったときに、自動的に全ポジションが決済されるシステムのことを指します。この仕組みは、投資家が大きな損失を避けられるように設けられたもので、FX取引を行う際にはきちんと理解しておきましょう。
ロスカットは、証拠金維持率が一定の割合を下回ったときに発生します。ロスカットが発生する証拠金維持率はFX会社によって異なりますが、証拠金維持率を100%と仮定すると、以下の計算式が成り立ちます。
証拠金維持率=有効証拠金÷必要証拠金×100
有効証拠金とは、口座残高から現在の含み益を加えた証拠金残高、または含み損を除いた証拠金残高のこと。すなわち、現在のポジションを保持するための証拠金と、新たに取引するための余剰資金の合計を指します。ロスカットが発生する条件には、有効証拠金が用いられます。
例えば、5万円の口座残高があり、1ドル=100円の為替レートで1万通貨の買いポジションを保有し、4万円が必要証拠金として設定されたとします。
損益がまだ発生していない場合、証拠金維持率は以下の計算式で求められます。
証拠金維持率=有効証拠金5万円÷必要証拠金4万円×100=125%
市場の動向が予想と反対に動き、1ドル=99円まで下落して損失が−1万円発生すると、証拠金維持率は以下のようになります。
証拠金維持率=有効証拠金4万円(5万円−1万円)÷必要証拠金4万円×100=100%
上記の例では、1万円の損失が発生した場合、ロスカットが発生される条件を満たすことになり、自動的に全ポジションが決済されます。
ただし、ロスカットは必ず発生するわけではありません。短期間で急に価格が変動した場合は、ロスカットの仕組みが間にあわない可能性もあります。その際には、預けた資金以上の損失が発生してしまうため、追加の証拠金が必要となるケースもあります。
ロスカットを防ぐには、損切りについて正しく理解することが不可欠。「FXの損切りを自動で行う注文方法3選!損を抑える5つのリスク管理手法も解説」で詳しく知ることができます。
FXの証拠金取引におけるリスクと対策
ここでは、FXの証拠金取引におけるリスクとその対策を紹介します。
自身に適した取引戦略を立てる
FXの証拠金取引を行う前に、自身のリスク許容度に合わせた取引戦略を立てることが大切。一例としてストップロスの設定が挙げられます。ストップロスとは、損失が一定額に達した場合に自動的に取引を終了する仕組みのこと。ストップロスを設定することで、予想外の大きな損失から証拠金を守ることが可能となります。さらに、リスクリワードレシオを把握することも重要。リスクリワードレシオは、投資で得られる見込み利益と可能性のある損失の比率を示します。この比率を意識することで、リスク管理を行いやすくなります。
FXの証拠金の仕組みについて正しく理解する
証拠金付きの口座でFXを取引する際、取引画面に自動的に証拠金維持率が表示されない場合は、ポジションごとに必要証拠金の額を計算する方法を把握しておかなければなりません。証拠金とレバレッジの関係や、必要証拠金が増えるとトレーダーが利用できるレバレッジが減ることを理解しておきましょう。
なお、経済指標の発表前にはボラティリティが通常よりも高くなり、必要証拠金が一時的に増える可能性があります。ボラティリティが不安定な期間の取引を避けるには、経済指標カレンダーを使用して重要なニュース発表を見逃さないようにしなければなりません。
フリーマージンを確保する
FXのフリーマージンとは、トレーダーの口座で現在のオープンポジションの証拠金として拘束されていない資金のこと。言い換えれば、トレーダーが新しいポジションに資金を供給するために使用できる口座内の現金の量を表します。
フリーマージンの計算例は以下の通りです。
- 資金:1万ドル
- 既存のポジションに割り当てられた証拠金:8,000ドル
フリーマージン=口座資金-オープンポジションの証拠金
フリーマージン=1万ドル−8,000ドル
フリーマージン=2,000ドル
口座の資金の大部分をフリーマージンとして持つことが賢明であると考えられています。そうすることで、トレーダーはマージンコールが発生しないようにできるからです。高確率で勝てる取引が発生したときに、すぐに取引ができるようにフリーマージンを確保することが重要です。
FX取引の初心者は少額の資金から始める
初心者が大きなリスクを避けながらFXの取引経験を積むためには、最初は小額の証拠金で取引を始めることが推奨されます。初心者がいきなり大きな資金を投入すると、一度の取引失敗で大損するリスクが高まります。少額から始めることで、取引経験を積みながらリスクをコントロールし、証拠金管理のスキルを身につけられるはずです。
なお、FXのリスクに対しては、適切な対策が欠かせません。「FXトレードにおける適切なリスク管理の基礎をプロが解説」で詳しく知ることができます。
まとめ
FXの証拠金は、取引開始の際にトレーダーが差し出す担保であり、取引口座の最低金額として機能します。証拠金制度のメリットは、レバレッジを利用すれば少額資金でも大きな取引ができること。ただし、レバレッジが高ければ高いほど、利益だけでなく損失も大きくなるため、適切なレバレッジの選択やリスク管理が重要です。また、ロスカットの仕組みや証拠金水準の計算方法などの理解も不可欠。初心者は少額の証拠金で取引を始め、リスクをコントロールしながら取引経験を重ねることが大切でしょう。
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