FXのスプレッドとは、売値と買値の差額のことです。スプレッドは実質の取引コストとなるため、できるだけ狭いスプレッドで取引することが重要です。本記事では、FXのスプレッドとは何か、どのように取引に影響するのか、計算方法や変動する理由などをプロが解説しています。
FXのスプレッドとは?
- FXのスプレッドとは通貨ペアの買値と売値の差額のことをいう
- スプレッドにかかる費用が実質の取引コストとなり得る
- スプレッドと通貨ペアのロット数から実質のコストがわかる
- スプレッドは変動しているため売買レートを必ず確認すべき
FXのスプレッドは、通貨を取引する際に必ずかかるコストです。有利なトレードで利益を出しやすくするためには、極力狭いスプレッドでの取引が欠かせません。スプレッド幅は、FXトレーダーにとって非常に重要です。
この記事では、FXのスプレッドの仕組みを基本から解説し、コストの計算方法や、スプレッドが変動する理由などに着目していきます。安定した狭いスプレッドで勝率を最大限に高める方法をご紹介します。
FXでスプレッドが生じる仕組みとは?
すべての金融商品はほとんどの場合、スプレッドが発生します。スプレッドとは、英語のspreadのことで、「広さ」「幅」などを指す言葉。簡単に言うと、商品の仕入れ値と売値の広さを意味しています。株式取引や英語の取引ツールなどでは「bid/offer spread(ビッド・オファー・スプレッド)」と呼ぶこともあります。
どんな商品であっても、一般的には「買値>売値」という数式のもと、買値の方が高く、売値の方が安い設定になっています。つまり、安く買って高く売るという仕組みです。
スプレッドが生じる仕組み
例えば、100円で買った商品を100円で売れば儲けは出ません。手間を考えればマイナスです。そこで、100円で買った商品を110円や120円と、仕入れ値よりも高く売ることが取引の常識となっています。
同様にFXでも、金融機関は通貨を安く仕入れて(トレーダーが見る売値)、できるだけ高く売りたい(トレーダーが見る買値)という思惑があります。こうしたビジネスや取引の背景からスプレッドが生じる仕組みになっているのです。
FXスプレッドの見方
次に、FXスプレッドの例としてユーロ/ドル(EUR/USD)の為替レートを見ていきましょう。FXでは通常、以下のように「買値(BUY)」と「売値(SELL)」の価格が表示されています。
大抵の場合、スプレッド値が表示されていて、上記では中央の数値がスプレッドです。まず、1.13398の買い値から1.3404の売り値を引きます。この計算で求められる数値は0.00006。
ユーロ/ドルにおいては、1pipsが小数点以下4位の数値となるため、このケースのスプレッドは0.6pipsとなります。
FXスプレッドのイメージ
FXではスプレッドがあるため、通貨を買った時点の損益は常にマイナスとなり、価格が上昇するまで時間がかかるリスクがあるわけです。この買値と売値のスプレッドがコストとなり、トレードに不利に働きます。
スプレッドの単位
スプレッドの単位は「pip(ピップ)/pips(ピップス)」といいます。異なる通貨ごとに共通して値幅を計算するために使われるようになりました。
Pipsへの変換方法は二つあります。
- 日本円以外の通貨ペア→小数点以下第4位:1pip
- 日本円の通貨ペア→小数点以下第2位:1pip
ユーロ/ドルのpipsの例
出所:IG証券
上図の場合、1.35361と1.35371となりスプレッドは1pipです。
出所:IG証券
Pipsの数値は左に行くほど大きくなり、読み方は左から「10,000pips、1,000pips、200pips、30pips…」。Pipsをポイントで表記するケースもあります。
日本円の通貨ペア、ドル/円(USD/JPY)の場合は小数点第2位が1pipなので、130.74と130.77のスプレッドは3pips。一方、ドル/円、ユーロ/円など、日本円の通貨ペアの場合は「銭」が使われる場合もあります。
FX業者や通貨ペアによってスプレッドは異なる
スプレッドは、FX業者や通貨ペアによって異なります。
通貨ペアの「買値」と「売値」のレートは、各FX業者が市場の取引価格を参考にそれぞれ決めており、業者ごとにレートやスプレッドに差が出るのです。
また、同じ業者であったとしても、通貨ペアの種類によって取引レートやスプレッド値が異なります。例えば、ユーロ/ドルのスプレッドがA社は0.4pips、B社は1.0pipsというようなことがあり得るということです。
さらに、覚えておきたいのが、スプレッドが主要通貨と新興国通貨かどうかによっても、スプレッドが異なるということ。
例えば、ユーロ/ドルは0.6pips、南アフリカランド/ドルは90pipsというようなケースが考えられます。一般的には、取引量が多く流動性が高い通貨ペアほどスプレッドは狭くなる傾向にあります。
詳しくはこちらの記事をご参照ください:FXの取引はスプレッドに要注意?
FXのスプレッドと取引コストの計算方法
ここまでは、スプレッドが「売値」と「買値」の差額をpipsで表した数値であるということを見てきました。そこで、実際にどれくらいのコストがスプレッドで発生するのか計算してみましょう。
ユーロ/ドルの買値が1.13404、売値が1.13398だった場合、「1.13404−1.13398=0.00006、つまり0.6pipsとなりました。
この取引レートで購入したとすれば、0.06pipsのスプレッド分がマイナスとなって取引がスタートすることになります。どれくらいのマイナス額・コストになるでしょうか?
スプレッドのコストを計算する方法は、スプレッドに取引通貨数(ロット)を乗じて計算します。
「スプレッド値×取引通貨数=スプレッドコスト」
- 1万ロットを取引した場合
「0.6pips×10,000通貨=0.6ドルのコスト」
- 10万ロットを取引した場合
「0.6pips×100,000通貨=6ドルのコスト」
このように、一定以上のコストがかかることがわかります。これがもし、スプレッド6pips、16pips、60pipsなどと開いたとすれば、数十ドル~数百ドルのコストが発生するリスクがあるのです。
FXの取引手数料は基本的に0円
国内FXの取引手数料は基本的に0円(無料)です。何度取引しても取引手数料はゼロであるため、コストはかかっていないと錯覚しがちですが、実はスプレッドというコストがかかっていることを留意しておく必要があります。
FXでは「コスト=スプレッド」を意味するのが一般的。厳密には、スプレッドは手数料ではありませんが、取引時に必ず発生する実質のコストとして認識されています。
スプレッドが変動する仕組み
FXのスプレッドは、一日のうちに広くなったり狭くなったりします。時には激しく乱高下することもあるため、スプレッドが変動する理由を理解しておく必要があります。
スプレッドの変動には、様々な要因が考えられますが、主に3つの要因から起きるとされています。
一つ目が「ボラティリティの高さ」。市場の見通しが不安定な時には上下に激しく価格が動くため、スプレッドが拡大しやすくなります。
二つ目の要因は「流動性の高さ」。取引量が多いと、休みなく円滑に注文が決済されるため、スプレッドが安定して狭くなる傾向にあります。先にも触れたように、主要通貨ペアはスプレッドが狭めで、新興国通貨はスプレッドが広がりやすいのが特徴です。
ドル/円15分足チャート(取引通貨量の比較)
三つ目として、重要な経済指標の発表前後や、突発的なニュース速報、日本時間早朝などにおいてスプレッドが拡大することもよく知られています。
詳細は、こちらの記事をご覧ください:FXの取引はスプレッドの変動に要注意?変動に影響を与える3つの要因もプロが解説!
スプレッドが広がる理由
スプレッドが広いということは、買値と売値のレート差が大きいということ。以下のような状況でレートが拡大することがあります。
- 取引量が著しく少ない→注文が入らないため価格が飛ぶ
- 取引量が著しく多い→注文が入りすぎて遅延からレートがずれる
- ボラティリティが激しい→売りと買いと双方の勢いからレートが上下に拡大
ボラティリティに関するこちらの記事もご参照ください:ボラティリティについて
スプレッドが狭くなる要因
スプレッドが狭いということは、買値と売値のレート差が小さいということ。欧州、とりわけロンドンやニューヨークなどの主要な市場ではスプレッドが安定して狭くなる傾向にあります。
スプレッドが狭いときに取引すれば、コストを抑えた有利な取引が実現しやすいでしょう。スプレッドの狭さは、ボラティリティが低く、流動性が高いことの表れともみられます。
スプレッドの変化に注意しよう
インパクトが強いニュースがあると、マーケットの不確実性が高まり、ボラティリティが激しくなります。なかでも注意したいのが、経済指標の発表。毎日何らかの発表があり、市場予想を裏切る内容であった場合は価格が急激に動くことがあります。
ドル/円15分足チャート(経済指標発表後のボラティリティ)
巨額の資金で取引するヘッジファンドであっても、発表前に結果を知ることはできません。そのため、スプレッドを広げてリスクを相殺する動きが出てきますが、こうした動きもスプレッドを広げる要因となっています。
スプレッドが原因でマージンコールになることも
さらに、スプレッドが急激に拡大した場合、ロスカットやマージンコールの可能性も高まるため、注意が必要です。FXにおけるロスカットとは、取引で一定の水準以上に損失が発生した場合、強制的に決済されること。マージンコールとは、ロスカットに近付いていることを知らせる通知を指します。
スプレッド拡大時に身を守る唯一の方法は、口座で使用するレバレッジを低めにすること。また、スプレッドが拡大している時には、様子を見てスプレッドが縮小するのを待つ方が有益な場合もあります。
FXのスプレッドに関するよくある質問
以下に、FXのスプレッドに関するよくある質問をまとめました。
- 固定スプレッドと変動制スプレッドの違いは?
- FXでスプレッドが広がる(変動する)理由は?
- FXでスプレッドが広がる時間帯は?
- なぜ日本時間早朝はスプレッドが広がる(開く)のですか?
- FXでスプレッドが安定する時間帯は?
- FXのスプレッドは決済時もかかりますか?
- ドル/円のスプレッドの最小(最狭水準)は?
- 「スプレッド負け」とは何ですか?
- スプレッドはFXの経費として認められますか?
- スプレッドはいつ引かれますか?
1. 固定スプレッドと変動制スプレッドの違いは?
通常、FX業者や金融機関などで採用されているのは変動スプレッドです。変動スプレッドは、市場動向や売買状況に応じて常に変化するのが特徴。狭くなることもあれば、広くなることもあります。
一方、固定スプレッドとは、市場動向や売買状況に関係なく、あらかじめ定めたスプレッド値が採用される制度をいいます。FX業者がサービスの一つとして提供したり、貿易上の契約として使われたりしています。
2. FXでスプレッドが広がる(変動する)理由は?
スプレッドが広がる理由は大きく三つあります。一つ目は流動性の低さ。売買注文が少ないと、注文が決まりづらいため、レート差が広がりやすくなります。ほかの二つの理由としては、流動性が高すぎる場合や、ボラティリティが激しい場合が挙げられます。売買注文が殺到し、注文を裁くのに時間がかかることで、スプレッドが広がってしまうのです。
3. FXでスプレッドが広がる時間帯は?
日本時間早朝の流動性が低い時間帯は、通常よりもスプレッドが広くなる傾向があります。加えて、ニュースイベントの前や、大きな影響のある出来事(米国の選挙など)、突発的な出来事(金融危機や災害、テロなど)が起きた時も、スプレッドが大きく広がることがあります。
4. なぜ日本時間早朝はスプレッドが広がる(開く)のですか?
FXのスプレッドは、日本時間6~7時頃(冬時間は7~8時頃)に広がりやすい傾向にあり、この現象はよく「早朝スプレッド」と呼ばれます。
スプレッドが広がる理由は、この時間帯では取引量が減って流動性が低下するからです。ロンドンやニューヨークなど大きな市場が閉まり、午前9時に東京市場が開くまではニュージーランドとオセアニアの市場が開いていますが、ほかの時間帯に比べ取引量が極端に少なくなります。
5. FXでスプレッドが安定する時間帯は?
FXでスプレッドが安定する時間帯は、欧州市場が動き出す16時からニューヨーク時間の翌朝6時頃(冬時間は17時~翌朝7時頃)です。特に、ロンドン市場とニューヨーク市場の時間帯が重なる22時~翌2時頃は、取引が多く流動性が高まり、安定した狭いスプレッドが期待できます。
6. FXのスプレッドは決済時もかかりますか?
スプレッドはエントリーの時だけでなく、決済の時にも発生しています。なぜなら、原則としてスプレッドは状況に応じて常に変動しているから。エントリーと決済の一往復で生じた平均スプレッドが、実際に発生したコストと見ることができます。
7. ドル/円のスプレッドの最小(最狭水準)は?
国内FXでは、ドル/円のスプレッドは0.2pipsあたりが最小(最狭水準)です。ただし、時間帯キャンペーンなどで0.1pipsやゼロになるケースもある模様。
8. 「スプレッド負け」とは何ですか?
「スプレッド負け」とは、取引で得た利益よりも、スプレッドの損失の方が大きい状態をいいます。スプレッド負けを防ぐには、スプレッドが狭いFX業者で取引をするのがポイント。
9. スプレッドはFXの経費として認められますか?
基本的に、スプレッドはFXの経費として認められません。なぜなら、スプレッドは買値と売値の差額であり、手数料ではないからです。手数料という名目で差し引かれた場合は、経費となります。
10. スプレッドはいつ引かれますか?
スプレッドはエントリーをした時に評価損益に反映され、決済をした時に証拠金に反映されます。
FXスプレッドのまとめ
FXで注文が決まった時に、マイナスから始まるのはスプレッドによるものです。スプレッドが広過ぎると、マイナス幅も大きくなり、プラスに転換するまでに時間がかかってしまいます。反対に、スプレッドが狭ければすぐにプラスへと転換し、短時間でも利益が得やすくなるのです。
スプレッドは、名目上は手数料ではありませんが、トレードするたびに隠れたコストとして存在しています。今回ご紹介したように、スプレッドが変動する理由を押さえたうえで、少しでも有利なスプレッドでの取引を心がけたいものです。
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