※2024年5月20日更新
- 「銅にはどのような特徴があるのだろう?」
- 「どのような製品に使われている?」
- 「銅の価値はどうやって決まるのだろう?」
- 「銅はどのように取引されている?」
このようなことを疑問に思ったことはないでしょうか?
銅は世界で最も用途が広い金属の1つであり、キッチンから建築物、さらには貨幣に至るまで、私たちの生活は銅であふれています。しかし、この身近な金属が具体的にどのような用途で私たちと関わり、どんな特性を持っているのか、意外と知らないことも多いはずです。
また、銅は経済のバロメーターとも称され、主要な商品(コモディティ)として幅広く取引されている資産です。本記事では銅に関する基礎知識や特徴、さらには銅の取引方法まで解説していきます。
銅とは何か?簡単に解説!
銅は英語で「copper」と呼ばれ、元素記号(化学式)では「Cu」で表されます。赤褐色の金属であり、農業や建築など幅広い分野で使用されています。
商品としてマーケットで取引されているものの、金や銀とは異なり、銅は代替通貨とはみなされていないため、価格がかなり低いのが特徴です。
しかし、銅に影響を与える需要や供給要因の多くは他の金属と同様であり、主要な商品として広く取引されるボラティリティの高い資産として知られています。
銅の7つの特徴(性質)とは?弱点は?わかりやすく解説!
銅には優れた特徴がたくさんありますが、弱点もあります。主な特徴と弱点は、以下の通りです。
- 高い誘電率
- 高い熱伝導性
- 優れた耐食性
- 磁性が無い
- 殺菌作用を持っている
- 加工が容易
- 色調が美しい
- 【弱点】変色しやすく熱に弱い
銅の使用目的がなぜ多岐にわたるのか、それぞれの特徴を確認していきましょう。
1. 高い誘電率
銅は他の金属と比べて、抜群に高い誘電率を誇ります。金属は一般的に誘電率が高いですが、その中でも銅は優れているのです。
誘電率が高いうえに価格も安価なことから、電線などでは銅が主に使用されています。
2. 高い熱伝導性
前述した誘電率と熱伝導性は相関関係があることから、銅は高い熱伝導性を持っています。つまり、他の金属と比較して熱伝導性に関しても銅は優れているのです。この特徴を生かして、鍋などの調理器具や冷蔵庫の伝熱管などに使用されています。
3. 優れた耐食性
金属はさびが問題になることが多いですが、銅は他の金属に比べてさびにくいという性質を持っています。加えて、海水に対しても耐食性があり、船底などでよく使用されています。
4. 磁性が無い
銅は金属でありながら、磁性がありません。磁性とは磁気を帯びた物質が示す性質であり、磁石に引き寄せられる鉄をイメージすると分かりやすいでしょう。したがって、磁気が厳禁とされる計測器などの材料として銅はよく選ばれています。
5. 抗菌作用を持っている
銅は抗菌効果があることでも知られています。簡単に言うと、銅と接触している細菌などの増殖を抑える効果があるのです。例えば、1円玉以外の硬貨には全て銅が材料として使われており、マスクやエアコンフィルター、浄水フィルターなどでも使われることがあります。
6. 加工が容易
銅は金属の中では、加工が容易な部類に入ります。なぜなら、金属としては柔らかいからです。例えば、曲げたり切ったりするような加工を比較的簡単に行うことが可能です。さらに、加工しても強度が落ちにくい点もポイントです。
7. 色調が美しい
最後に、その色調も銅の重要な特徴となっています。有色の金属は金と銅の2つのみであり、銅は金色の他に赤や黄色、白など多彩な色を出すことが可能です。
そのため、建築や装飾品の材料としても利用されています。
8.【弱点】変色しやすく熱に弱い
銅の欠点として、比較的早く変色して黒くなってしまうことが挙げられます。このことから、食品に触れる部分には使いづらいのです。
他にも、熱伝導性は高いものの熱には弱く、200℃を超えると軟化してしまい、変形する可能性があります。銅はこのような欠点を補うため、他の金属と組み合わせた合金として幅広く使用されています。
銅の合金や種類一覧
銅にはさまざまな合金や種類があり、以下のようなものが主に使われています。
- 青銅
- 黄銅
- 分銅
- 白銅
- ピカ銅
- 硫酸銅
- タフピッチ銅
- チタン銅
- 丹銅
それぞれの特性を理解し、銅に対する知識を深めましょう。
1. 青銅
青銅とは、銅を主成分としてスズを含む合金のことを言います。硬度はスズの添加量が多いほど上がりますが、それに伴って脆くなるという特徴もあります。
硬さと強度では鉄に劣りますが、加工性に優れていたり、さびにくかったりするのが大きなメリットです。古代から使われており、例えば弥生時代には青銅で作られた銅鐸(どうたく)という祭具が用いられました。
2. 黄銅
黄銅とは、銅と亜鉛の合金のことです。適度な粘りがあり、柔らか過ぎない硬度があることから加工がしやすく、古くから人々の生活で用いられてきました。現在でも金管楽器や水回りの部品など、幅広い用途で使われています。
3. 分銅
分銅とは、はかりで目方を測るときに基準とする、真鍮(しんちゅう、銅と亜鉛との合金)製などの重りのことです。江戸時代には、青銅で作った分銅が使われたこともありました。
4. 白銅
白銅(はくどう)とは、銅を主体としたニッケルを10%から30%含む合金のことです。ニッケルの量が多いものは銀に似た白い輝きを放つため、銀の代用品として貨幣などに使われます。例えば、昭和30年代頃は銀貨だった100円硬貨は、その後の銀価格高騰を受けて白銅製に切り替えられました。その他にも、熱交換器や電線ヒューズ、ナイフなど幅広い分野で利用されています。
5. ピカ銅
ピカ銅とは、雑線(雑電線、被覆電線)から被覆(皮)を除去し、銅を取り出したものです。その美しい光沢からピカ銅と呼ばれています。基本的に断面の直径が1.3mm以上である必要があり、細い場合はピカ銅になりません。
6. 硫酸銅
硫酸銅とは、電気銅製造工程の銅電解液を精製した藍青色の結晶のことです。銅めっきや触媒、顔料など広範囲に使用されており、安定した品質の高さから、特に、めっき用で高い評価を受けています。
7. タフピッチ銅(純銅)
タフピッチ銅とは、非常に純度の高い純銅と呼ばれる銅の一種です。銅としての純度が高いため、銅本来の加工性や耐食性などに優れているのが特徴です。
8. チタン銅
チタン銅とは、チタンを添加元素とする銅の合金のことです。展延性や耐食性、耐熱性、耐摩耗性、耐疲労性に優れています。その美しい色調から、建築用や装飾品、装身具や化粧品のケースなどに使われています。
9. 丹銅
丹銅とは、淡紅色をした銅と亜鉛の合金のことです。同じく銅と亜鉛からなる黄銅に比べ、亜鉛の量が少なくなっています。建築用や装飾品に使われる他、加工性に優れることを生かしてラジエーターやスイッチ端子などにも使われます。
銅は宝飾品から家電製品など、さまざまな用途に使われています。熱や電気を通す性質があるため、電気機器の配線やモーター、建築用資材など、重要な部品としても活用されています。また、真鍮や青銅などの合金にも使用されています。
銅の歴史と取引価格の変動
銅の歴史は約一万年前、青銅器時代に初めて銅が製錬されたことに始まります。物々交換を基本とした商業貿易の歴史の中で、銅の価値は食料やワイン、家畜、他の金属などと比較されました。
ローマ時代以降、銅は金や銀と並んで貨幣の材料として使われるようになりますが、銅本来の価値が低いため本位貨幣にはなりませんでした。
しかし、20世紀に入ると、銅は世界各地の多様な分野で使われるようになりました。その結果、銅価格は先に述べたような産業用途と連動するようになります。
2000年代のコモディティブームでは銅価格が劇的に上昇し、2004年初頭は1ドル=1ポンド前後だったものが、2006年5月には4ドル=1ポンドまで上昇しました。下のチャートは、その後数年間における大きな価格変動とその原因を示しています。
銅価格の長期チャート(2013年半ば~2019年)
最大の銅生産国とは?最大手の企業は?
銅の生産量が多い国はチリ、ペルー、コンゴ民主共和国です。チリは2番手のペルーと比較しても2倍近い生産量を誇り、2023の生産量においてはペルーの260万トンに対し、チリは500万トンでした。
銅生産上位10ヶ国、および2023年の生産量は以下の通りです。
生産国 | 生産量 |
---|---|
1位 チリ | 500万トン |
2位 ペルー | 260万トン |
3位 コンゴ民主共和国 | 250万トン |
4位 中国 | 170万トン |
5位 米国 | 110万トン |
6位 ロシア | 91万トン |
7位 インドネシア | 84万トン |
8位 オーストラリア | 81万トン |
9位 ザンビア | 76万トン |
10位 メキシコ | 75万トン |
出所:Statista 2023
企業別に見ると、2022年現在でチリのコデルコ社や米国のフリーポート・マクモラン社が銅マーケットの最大手企業となっています。
銅の取引価格に影響を与える要因とは?
銅価格は需要と供給に加えて、代替金属の見通しなど多くの要因に左右されます。
- 供給
- 需要
- 在庫状況
- 経済状況
- 代替金属
- 投資
取引を考えている場合は、しっかりと要因を理解して値動きの予想に役立てましょう。
1. 供給
まず、銅は供給が増えたり減ったりすることによって、価格が上下することがあります。銅の産出量が多ければ多いほど豊富に供給されることで価格は低くなりますが、反対に産出量が少なければ少ないほど供給が減って価格が高くなるということです。
例えば、労働者のストライキや地震など、地政学的リスクや自然災害などの鉱山生産量を下げ得るリスクによって、価格が上昇することがあります。新しい鉱山の開発や既存の鉱山の拡張は多額の投資と長い時間を要するため、供給量を急に増やすことは難しく、供給が減れば多くのケースで価格が上昇することになります。
2. 需要
需要面では、輸出量よりも輸入量が多い純輸入国が銅(またはその他の商品やサービス)の需要を支えています。銅の需要は、過去100年間で約20倍にまで増加しました。例えば、発展途上国ではインフラの整備や経済活性化のために大量の銅を使用しており、他にも電気自動車のような新技術で、銅は不可欠な存在として使われているのです。
さらに、銅は住宅産業で大量に使用されるため、銅価格は国内の住宅市場と連動しています。つまり、非農業部門雇用者数、住宅ローン金利、GDPなどの住宅市場に影響を与える要因が銅価格にも影響を及ぼす可能性があるということです。経済成長は銅の需要を高め、新技術も新たな銅需要を生み出しているのです。
3. 在庫状況
銅の在庫の量も、銅の価格に大きな影響を与えます。在庫の量によって需要増加への対応のしやすさが大きく変わるからです。
在庫が多い場合は、予期せぬ需要の増加にも対応しやすくなり、価格の急激な上昇を抑制しやすくなります。逆に在庫が少ないと、小さな供給の遅延や需要の増加でも価格が上昇しやすくなるのです。そのため、銅の在庫データをチェックすることで、意思決定を行う際の大きなヒントにすることができます。
4. 経済状況
世界経済の状況も、銅価格を大きく左右します。経済の好不調で銅の需要が増減するからです。
経済が好調なときは、建築業や製造業など銅を多く使う産業が活発になり、銅の需要が増加して価格が上がります。逆に経済が不調なときには、これらの産業の活動が鈍化し、銅の需要が減少して価格が下がります。世界経済の状況を把握することも、銅の値動きを予想するうえでの重要なポイントです。
5. 代替金属
代替金属への置き換えも、銅価格に影響を与えます。銅価格が高騰すると、企業や製品設計者はコスト削減を目的として、銅の代わりに他の金属を検討し始めます。これにより、銅への需要が減少し、結果的に価格に影響を与えるのです。
例えば、2000年代半ばに銅価格が上昇したことで、配線や自動車生産でアルミニウムへの切り替えが見られました。アルミニウムは銅よりも安価であり、銅価格の上昇局面では代替金属として好まれる傾向があります。
代替金属への移行は一時的なものだけでなく恒久的なケースもあり、テクノロジーの進歩などによる恒久的な代替金属への置き換えには注意する必要があります。
6. 投資
最後に、実際には銅を必要としない投資家も、短期的には銅の価格に影響を与えることがあります。金融市場での銅の取引は、実際に銅を使わなくても価格を動かすからです。
投資家は銅の将来の価格上昇や下落を見込んで、銅を買ったり売ったりして、銅価格の上昇や下落を引き起こします。実需に基づかない取引であっても、価格に変動を生じさせる要因となり得るのです。
銅の取引方法とは?
銅は多くの方法で取引されていますが、代表的なものは以下の4種類です。
- CFD
- 先物取引
- オプション取引
- ETF
それぞれの特徴を理解し、自分に合った取引方法を選ぶようにしましょう。
1. CFD
CFDとは、「Contract for Difference」の略であり、日本語では「差金決済取引」と呼ばれています。差金決済取引を簡単に言うと、差額だけのやり取りが発生する取引のことです。
現物での受け渡しを行わずに、反対売買によって出た金額の差で決済する差金決済取引では、業者にもよりますが、株価指数や金、銀、株式など幅広い資産を取引することが可能です。ただし、現物の受け渡しの無いCFDでは取引金額に応じた証拠金が必要になることには注意してください。
【関連記事】銅以外のCFD銘柄については、以下の記事で詳しく知ることができます。
2. 先物取引
先物取引とは、ある商品(原資産)を、将来の決められた日に、取引の時点で決められた価格で売買することを約束する取引のことを言います。先物取引は利益を得るという目的の他にも、価格の変動があるものを一定の値段で買ったり売ったりできることを生かして、価格変動の影響を避けるためによく使われます。
例えば、米は天候や環境などによって価格が変動しますが、先物取引で将来の決められた日に今取り決めた価格で米を買う契約をしておけば、期日が来たときに価格が上がっていても取り決めた価格で米を買うことが可能です。もちろん、価格が上がると思えば買いから入り、下がると思えば売りから入った後、期日までに予想通りになれば反対売買をして利益を得ることもできます。
3. オプション取引
オプション取引とは、将来の決められた期日にあらかじめ決められた価格で、対象商品を買う権利や売る権利を売買することです。大きな特徴として、買い手は損失が限定される一方、売り手は損失の上限が無く、証拠金が必要になる点が挙げられます。
例えば、「4月1日に銅を10万円で買う権利をください」というような契約をすることになります。
先物取引との違いはオプション取引が将来売買できる権利の取引である一方、先物取引は将来の売買を約束する取引という点です。オプション取引は買う権利を放棄して損失を軽減できるのに対し、先物取引は期日に購入する必要があります。オプション取引は買い手の場合には損失が限定されているため、先物取引より投資しやすく感じる方が多いでしょう。
4. ETF
ETFとは「Exchange Traded Fund」の略であり、日本語では「上場投資信託」と呼ばれています。ETFは投資信託の一種ですが、一般的な投資信託と違って取引所に上場しているため、個別株と同じように証券会社を通じて取引所で売買することができる点が大きな特徴です。
例えば、日経平均株価やS&P500、金、銀、債券など、幅広い資産に投資することができます。取引所でリアルタイムに売買できることから、FXに慣れている方はなじみやすいでしょう。
銅を取引する理由とは?
銅を取引する理由は、金や銀のケースとは若干異なります。銅はトレーダーに人気がある商品で幅広い用途がありますが、供給量が非常に豊富です。つまり、金や銀には固有の価値がありますが、銅価格はその実用性と結びついているのです。
また、銅価格は経済の健全性を測る指標と見なすことも可能です。そのため、銅は経済学の博士号を持っていると比喩されて「ドクター・コッパー」というニックネームで呼ばれています。こうした理由から、銅は世界の成長やGDPに対する見解に基づいてポジションを取る機会を見出すことができます。
しかしながら、銅への投機はリスクも伴います。経済が減速すれば、もちろんマーケットは低迷します。また、他の金属と同様に銅の供給は有限であり、今後60~70年で世界の埋蔵量が枯渇すると言われています。
【関連記事】「銅相場の効果的な予想方法とは?ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析をプロが解説」では、銅の安定した取引に役立つテクニカル分析戦略について詳細に解説しています。
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まとめ
銅は多彩な魅力を持つ金属であり、現代社会の基盤を支える重要な素材です。その利用は農業から建築に至るまで、非常に広範囲に及びます。また、投資対象としても興味深い存在であり、今後もその需要は拡大していくと考えられています。投資方法にはCFDや先物取引、オプション取引、ETFなどがあり、経済の健全性を示すバロメーターとしても利用されています。
銅の相場分析は経済予測や投資戦略のヒントになるため、銅の物理的特性や用途を把握することで投資にも役立てることが可能です。
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