ダウ・ジョーンズ工業株価平均(NYダウ平均株価、DJIA)は、米国の代表的な企業のパフォーマンスを反映した主要な株価指数です。そして、金融市場の動向を測る上で信頼性が高く、おそらく、世界中で最も引用されているマーケット指数の一つです。本記事では、NYダウ平均株価とは何か、その歴史や算出方法、さらにはNYダウ平均株価の取引の仕方について、詳しくご説明いたします。
NYダウ平均株価とは何か?
NYダウ平均株価とは、米国の各業種を代表する30社の株価を反映した株価指数です。つまり、時価総額を基にした時価総額加重平均型株価指数ではなく、構成銘柄の株価に基づいた株価平均型株価指数です。
NYダウ平均株価は主に、米国株式市場、ひいては米国経済全体の実態を捉える目的で使用されます。そのため、個別銘柄のパフォーマンスを相対的に測定する際に、ベンチマークとして活用することができます。
また、世界中の株価指数に大きな影響力をもっており、日本の日経平均株価も例外ではありません。実際、NYダウ平均株価の推移に合わせて日経平均株価が推移する事も珍しくなく、同じ様なチャートの形になることがあります。
NYダウ平均株価とS&P500・ナスダック総合指数の違いとは?
S&P500は、米国企業のうち選ばれた500社の時価総額をベースにした指数です。ナスダック総合指数は、ナスダックに上場するすべての銘柄(3000社以上)を対象とした、時価総額をベースにした指数です。
どちらも時価総額の大きな銘柄の影響を受けやすく、米国株式市場全体よりもむしろ米国の大型株に焦点を当てた指数の意味合いが強い一方、NYダウ平均株価は様々な分野から選ばれた30社が厳選されているので、米国株式市場全体の景気を反映しやすい特徴があります。
とはいえ、NYダウ平均株価とS&P500、ナスダック総合指数との関係は密接で、短期的には大きく剥離していても、長期目線で見ると同じトレンドを形成しており、推移する方向が同じであることがわかります。
NYダウ平均株価の構成銘柄
NYダウ平均株価の構成銘柄は、ニューヨーク証券取引所(NYSE)とナスダック市場(Nasdaq)のいずれかに上場している優良企業30社です。NYダウ平均株価は当初、米国の工業生産高(製造業)を反映するために考案された指数ですが、近年の米国経済をより的確に反映するために、現在は、通信、エネルギー、テクノロジー、製薬、エンターテイメントなどのさまざまな業種の銘柄も組み込まれています。
そして、米国株式市場の動向を的確に反映し続けるため、米国の主力産業が変化するのに合わせて銘柄の入れ替えが行われることもあります。例えば、2015年には、AT&Tと入れ替わる形でアップルが採用されました。2020年8月には石油のエクソンモービル、製薬のファイザー、航空機部品・防衛のレイセオン・テクノロジーズが除外され、新たに顧客情報管理(CRM)のセールスフォース・ドットコム、バイオ製薬のアムジェン、機械のハネウェル・インターナショナルが新たに採用されています。
2023年11月現在、NYダウ平均株価を構成する30銘柄は以下の通りです:
アップル、アムジェン、アメリカン・エキスプレス、ボーイング、キャタピラー、セールスフォース、シスコシステムズ、シェブロン、ウォルト・ディズニー・カンパニー、ダウ、ゴールドマン・サックス・グループ、ホーム・デポ、ハネウェル・インターナショナル、IBM、インテル、ジョンソン・エンド・ジョンソン、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー、コカ・コーラ、マクドナルド、3M、メルク、マイクロソフト、ナイキ、プロクター・アンド・ギャンブル、トラベラーズ、ユナイテッド・ヘルス・グループ、ビザ、ベライゾン・コミュニケーションズ、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、ウォルマート
NYダウ平均株価の算出方法は?
株価平均型株価指数であるNYダウ平均株価は、構成銘柄の株価を合計し、それを「ダウ除数」と呼ばれる数値で割って算出されます。この除数は、もともとは構成銘柄の数でしたが、株式の分割や構成銘柄の入れ替え、その他の特殊事情によって指数の値に不自然な影響が及ばないように、定期的に調整されています。
NYダウ平均株価の歴史
NYダウ平均株価は、1896年5月26日に、ダウ・ジョーンズ輸送株平均の管理も行っていた実業家のチャールズ・ダウによって発表されました。当初は、ニューヨーク証券取引所の代表的な12銘柄で構成されていましたが、その後、米国経済を構成する様々な産業も取り込むために、構成銘柄が、ニューヨーク証券取引所とナスダック市場(Nasdaq)に上場する30社に拡大されました。
1969年以降、NYダウ平均株価の年間平均リターンは8%前後で推移していますが、これにはインフレ率が考慮されていないため、実質リターンはこれを下回る数値となるでしょう。ところで、ダウ平均は、年間平均リターンはプラスですが、年ごとに見ると、ボラティリティが高いことが分かります。例えば、ドットコム・ブームだった1995年~1999年は、年平均で25%近く上昇しましたが、その後の3年間は年平均で10%下落しました。また、2008年の金融危機では約34%下落しましたが、世界経済が回復に転じた2009年には18%を上回る上昇が見られました。
そして、2020(令和2)年3月には新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、前営業日比2,997.10ドル安という過去最大の下げ幅を記録しました。
それでも、新型コロナウイルスワクチンの開発成功や米国新大統領の誕生などで二番底をつけることなく急回復し、2020年11月には史上初の3万ドルを突破しています。
幅広い銘柄で構成されているS&P500とNYダウ平均株価には、歴史的に密接な相関関係があり、この2つの指数は事実上、常に同じ方向に動きます。下の図は、21世紀以降、ダウ平均に特徴的な値動きがあった時期と、そうした値動きの要因となった事象を表しています。
このように、チャートを長期的に見ると、リーマン・ショックや新型コロナウイルスショックで一時的な下落はあるものの、右肩上がりに推移していることがわかります。
NYダウ平均株価に影響するものは?
NYダウ平均株価は、米国経済の動向を反映するものであるため、多くの場合、経済に影響を与える要因はNYダウ平均株価にも影響を与えます。例えば、NYダウ平均株価は、金融政策の変更や経済指標の発表に連動するような値動きを見せることがあります。
特に、毎月発表される米雇用統計は雇用者の増減を表すもので、直接的な経済指標となるため、影響力は大きく結果によってはNYダウ平均株価が大きく変動することがあります。
また、2008年の世界的金融不況の際のNYダウ平均株価の値動きを上図で確認すると、主要なコモディティ(商品)価格や金融危機が株価に影響を与えた結果、そうした影響がNYダウ平均株価にも及んでいることが分かります。
さらに、米大統領選が始まると、候補者の言動や行動によってNYダウ平均株価が影響を受けることが多くなり、経済に関する発言が飛び出した際はNYダウ平均株価のチャートが大きく動くことがあります。
影響は一時的なものからしばらくトレンドを形成するような長期的なものまでありますが、今後の景気に影響する事柄は特に波及力が強いと言えます。
NYダウ平均株価の取引方法は?
NYダウ平均株価は、先物やオプション、上場投資信託(ETF)といった形で取引することができます。さらに、DailyFXでは、NYダウ平均株価をデイトレードする方法について、トレード戦略、専門家によるポイント解説、取引時間など、より実践的な情報を提供しています。
もちろん、日本でもNYダウ平均株価を取引することは可能で、NYダウ平均株価を商品として取り扱っている金融業者はたくさんいます。
CFD取引でNYダウ平均株価を扱っている業者は多く、CFD取引であれば先物取引のように期限が決まっていないので、中長期でポジションを保有することができます。
NYダウ平均株価を選ぶ理由
NYダウ平均株価は、米国経済全体の動向を予測し、それに基づいて取引を行いたい場合に役立つ指数です。そして、NYダウ平均株価を選んで取引を行う理由として、以下のようなものがあります:
- 認知度:リアルタイムチャートによる継続的なデータ分析など、豊富な情報が入手できるため、NYダウ平均株価は、比較的透明性の高い金融商品として認識されています。
- ボラティリティ:NYダウ平均株価は、米国の非農業部門新規雇用者数のようなマクロ要因に反応して急速に動くことがあります。こうしたボラティリティの高さから、ロングポジションあるいはショートポジションのいずれでも、トレードで大きな利益を得られる可能性があります(もちろん、損失を被る可能性もあります)。
- 分散:NYダウ平均株価のポジションを1つ保有するだけで、30銘柄を取り込んだトレードをすることができます。これは、振れ幅に影響されやすい個別銘柄に集中して投資するよりも、トレードのリスクを分散するのに役立ちます。
- 流動性:NYダウ平均株価は、取引量が多く、流動性の高い金融商品です。そのため、希望の価格でポジションをエントリー或いはエグジットすることができ、スリッページを最小限に抑えられます。
- 上昇トレンド:NYダウ平均株価は長期的に見ると、押し目を作りながらも右肩上がりに推移しています。そのため、積立投資先としても非常に人気があります。
このように、NYダウ平均株価は米国では昔から経済を判定する信頼ある株価指数として評価され、取引が行われています。
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